どんな試験でも,「手を広げてはいけない。絞り込んだ教材を繰り返すべきだ。」と言われます。
それは,司法書士試験のような難関試験であっても同じです。
受験指導をする講師や試験の合格者の方のほとんどが口を揃えて言いますので,これは試験勉強の真理です。
みなさんも,1度はお聞きになったことがあると思います。
しかし,これを実践できず,手を広げてしまう方が多いのも事実です。
特に,1度不合格の経験をした方に多いです。
知らない知識が多かったために合格できなかったと考えてしまった,1度学習している教材だと知っていることが多いため教材に書いていないことが気になってしまった,といったことが理由だと思います。
手を広げないで済むようにするため,この記事では,手を広げなくても構わない理由を説明していきます。
この記事をお読みいただければ,試験勉強の森に迷い込んでしまわないようになります。
【理由①】使っている教材にだけ載っていない知識はない
手を広げないと合格できないと考えてしまうのは,「自分が使っている教材にだけ載っていなくて,他の受験生が使っている教材には載っていたらどうしよう……」と考えてしまうからですよね。
しかし,そのような知識はありません。
教材作成者は,他の教材を確認したうえで作成します。
少なくとも,有名な教材はすべて確認します。
よって,「使っている教材に載っていない知識=他の受験生の方も知らない知識」です。
ただ,この話には前提条件が1つあります。
それは,「合格者が出ている教材を使用している」ということです。
実は,合格者が(ほとんど)出ていない教材も若干ですがあります。
よって,教材選びは慎重にしましょう。
【理由②】教材に載っていない知識が出てもそれが原因で不合格にはならない
教材に載っていない知識は,必ず出ます。
試験後は,それが原因で不合格になったと考えてしまいがちです。
教材に載っていない知識のほうが印象が強いからです。
また,普段の学習で使用している過去問集や問題集は,教材に載っていない知識がほとんどなく,それとのギャップがあることも影響しています。
教材は,過去問を基に作ります。
そのため,過去問集に掲載されている知識のほとんどが教材に載っています。
また,問題集は教材を基に作ります。
やはりこれも知識のほとんどが教材に載っているものとなります。
しかし,試験問題を分析すればわかるのですが,不合格になってしまう原因は,教材に載っていない知識を知らないことではなく,載っている知識の判断を間違えてしまったことなのです。
載っていない知識を追いかけるよりは,載っている知識について「どうすれば間違えないようになるか」に労力をかけるべきです。
【理由③】うまく広げられない
手を広げても,その広げた所から出題されるのであれば,その労力は無駄にはなりません。
以下のように手を広げられれば,そうなるでしょう。
しかし,自分で手を広げると,実際に上記のようにバランスよく広げることはできません。
現実は,以下のようになってしまいます。
さらにいうと,手を広げたために,基本知識が疎かになってしまう可能性があります。
……と,森山先生もおっしゃっています。
しかも手を広げようとすると,テキストなど基本的で出題率が高い部分が手薄となり,基本的な問題での致命的な失点をしてしまいます。まずは,テキストを確実にすることを目指すべきです。「このテキストで足りますか。プラスすべきですか」と言ってきた人で,テキストが確実になっていた人はいません。 https://t.co/p49NySTjuX
— 森山和正(司法書士試験講師) (@KazMoriyama) September 23, 2019
【理由④】知識の混同が生じやすくなる
頭に入っている知識の量が多くなれば,それだけ試験で知識を思い出すときに混同が生じやすくなります。
頭に入っている知識の量が少なければ少ないほど,思い出すのは容易になります。
子供の頃,駅名をすべて記憶したりしたことがないでしょうか。
あれができたのは,子供なのでまだ頭に入っている情報が少ないからです。
大人になり,情報が多くなるにつれて単純記憶をするのが難しくなります。
よって,不必要に頭に入れる知識を増やすべきではないのです。
手を広げなくても構わない理由,手を広げるべきでない理由を説明してきました。
いかがでしたでしょうか。
短期合格者の方は,もしかしたらみなさんが驚くかもしれないほど知識の量は少ないです。
私自身も,今から考えると「よくあんな知識量で合格したな」と思います。
それでも,使っている教材以外に手を伸ばさず,ぶれないので受かるのです。
教材を慎重に選んだうえで,選んだら他にぶれることはせず,その教材を使って得点を取れるようにすることに時間を使ってください。
松本 雅典