会社法で1番理解しにくい創立総会の決議要件はこれでスッキリ!

会社法(商法)・商業登記法

テキストを何度読んでも、どうしてもわからない規定ってありますよね。

1つ例を挙げると、会社法73条1項の創立総会の決議要件。

 

 

会社法73条(創立総会の決議)

1 創立総会の決議は、当該創立総会において議決権を行使することができる設立時株主の議決権の過半数であって、出席した当該設立時株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う。

 

創立総会とは?

創立総会:募集設立において、出資をした発起人と設立時募集株式の引受人が参加する総会(会社法65条1項)

 

(『【第3版】リアリスティック会社法・商法・商業登記法Ⅰ』P95、96より一部抜粋)

 

 

「『2/3以上』だけでいいんじゃないの?」と思わないでしょうか。

私の受験生時代、テキストを何度読んでも、単に条文の字句どおり説明しているだけなので、わかりませんでした。

しかし、合格後に学者本を読んでやっとわかりました。

 

『【第3版】リアリスティック会社法・商法・商業登記法Ⅰ』P96~97を抜粋して、説明します。

 

 

議決権を行使することができる設立時株主の全員が出席すれば、「2/3以上」の要件だけでいいんです。

 

ex. 株式数が1000株(すべて議決権あり)である場合に、創立総会に設立時株主の全員が出席したとします。このときは、出席した議決権を行使することができる設立時株主の議決権の2/3以上である667株以上の賛成があれば、設立時株主の議決権の過半数である501株以上も充たします。

 

 

しかし、議決権を行使することができる設立時株主の一定数以下の者しか出席しなかった場合に、「過半数」の要件が生きてくるんです。

 

ex. 株式数が1000株(すべて議決権あり)である場合に、創立総会に501株を有する設立時株主が出席したとします。このときは、出席した議決権を行使することができる設立時株主の議決権の2/3以上である334株以上の賛成ではダメで、設立時株主の議決権の過半数である501株以上、つまり、出席した設立時株主の全員の賛成が必要となります。「過半数」の要件は、「出席者の過半数」(流動値)ではなく、「全議決権の過半数」(固定値)です。「過半数」は、固定されているので、出席者が少なくなると、「出席者の議決権の2/3以上」よりも多くの賛成数が求められます。このex.が出席者の賛成数が最も多く求められる例で、出席者の全員の賛成が求められています。

 

「過半数」の要件は、このように働くので、実質的には定足数であるともいわれています。

 

 

 

 

 

 

松本 雅典

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