この記事は,2017年5月26日に公開しましたが,2019年11月25日に最新の情報に書き換えました。
民法(債権法)改正成立
2017年5月26日,民法(債権法)改正が成立しました。
明治時代に民法が制定されて以降,最も大きな大改正です。
「債権法」の改正といわれていますが,意思表示や時効など総則もかなり変わります。
物権と家族法(親族・相続)は,ほとんど変わりません。
『リアリスティック民法』でいうと,Ⅰ・Ⅲの一部が大きく変わるとお考えください。
司法書士試験の改正法の出題はいつから?
みなさんが最も気になるのは,「いつから改正法が出題されるの?」ということだと思います。
施行日は,2020年4月1日であると2017年12月20日の官報で正式に公布されました。
実務に多大な影響を与える改正ですので,周知期間が3年近く設けられました。
司法書士試験は,基本的には,その年度の4月1日に施行されている法令に基づいて実施されます。
よって,出題は以下のようになると考えられます(一部はすでに実施されています)。
現行法・改正法の出題 | |
---|---|
2017年度 | 現行法(実施済み) |
2018年度 | 現行法(実施済み) |
2019年度 | 現行法(実施済み) |
2020年度以降 | 改正法 |
2017年度~2019年度は,現行法で実施されました。
2018年度については,2017年12月20日,法務省から以下の発表がされました。
法務省から、
「平成30年度年度司法書士試験における民法……の適用については、」改正民法ではなく、「平成30年4月1日現在において施行されている現行の民法に基づいて解答してください」との発表がありました。
平成30年度は、現行法で確定です。
— 松本 雅典(司法書士試験講師) (@matumoto_masa) 2017年12月20日
2019年度については,2018年4月1日,官報および法務省からの受験案内の発表により債権法改正が出題範囲外であることが判明しました。
詳細は,以下の記事をご覧ください。
受験生の方の改正法の学習
2020年度以降の合格を目指す受験生の方は,改正法で学習をしてください。
私の基礎講座は,以下のように実施します。
「2019年度向けの講座までは現行法で講義を行う
2020年度以降向けの講座からは改正法で講義を行う」
改正民法の学習法は,以下の方で少し異なります。
①改正前の民法を本格的に学習したことがある方
②改正前の民法を本格的に学習したことがない方
上記①の方は,改正前の民法の説明も記載したテキストを使用してください。
民法改正に対応したテキストは,以下の2つがあります。
Ⅰ 改正前の民法の説明も記載してどう変わったのかを説明したテキスト
Ⅱ 改正後の民法のみを説明したテキスト
上記Ⅱのテキストは,上記②の方用のものです。
上記②の方については,「改正前の情報はあまり入れず,いきなり改正民法のみを学習したほうがよい」という考えも十分あり得ます(私は少し違いますが)。
しかし,上記①の方は,「頭の切り替え」が必要なので,上記Ⅰのテキストを使用する必要があります。
改正があった部分のみ忘れられればよいのですが,そんな都合のよいことはできません。
改正前の規定や考え方は,捨てようとしても頭に残ります。
そこで,切り替えができるように,改正前の民法の説明も記載したテキストを使用するべきです。
債権法改正・相続法改正(*)に完全対応した『リアリスティック民法』は2018年12月に,債権法改正・相続法改正(*)に対応した『リアリスティック不動産登記法』は2019年7月に発売しました。
*2018年に相続法の改正もされました。詳細は,【2018年7月6日成立】民法(相続法)の改正のポイントをご覧ください。
債権法改正・相続法改正完全対応版『リアリスティック民法』は,改正前の民法の説明も記載しています。
私のテキストは,以下のように,改正点に「改正」「明文化」「新設」のマークをつけ,改正前の規定は理由付けで使っています。
なお,上記②の方(改正前の民法を本格的に学習したことがない方)が上記Ⅰのテキスト(改正前の民法の説明も記載してどう変わったのかを説明したテキスト)を使用する場合には,改正前の規定の説明は完全に理由付けとして使ってください。
もちろん,改正前の規定を記憶する必要はありません。
合格者の方
条文
まず,条文を入手してください。
現在発売されている六法には改正法も収録されています。
データは,以下からご覧いただけます。
・民法の一部を改正する法律案・新旧対照条文(PDF)
姫野先生に教えていただいた,以下の“旧新”対照表も便利です。
解説書
次に解説書ですが,講師のように中間試案や民法(債権関係)部会の会議録を読んでいくというのはやりすぎなので……,まずは以下の書籍が,網羅的ではありませんが,事例(弁護士さんが書いているので実務に即した事例となっています)を基に説明しているので,とっつきやすいと思います。
その後は,法制審議会民法のメンバーである先生の以下の書籍。
以下の書籍はいずれも,改正案を作った先生の書籍であり,改正法の学習を続けている人は,ほぼ全員が読んでいます。
ただ,いずれも現行法およびその問題点を理解しているのが前提の記述なので,民法の学者本を読んでいる方でないと,少し難しいと思います。
上記のような学者や官僚が書いた本の理由付けや考え方をわかりやすく書いたテキストで学習したければ,以下の拙著をお使いください。
事例
具体例なら,今は以下の書籍がベストです。
【長所】
・同一事例について,旧法と新法を適用した場合を見開き1ページに収録
・執筆準備に時間をかけている(執筆者の1人の先生から先日講師室で聞きました)
【短所】
・字が小さい
・表記に統一感がない箇所あり
ある程度改正法を把握していることが前提なので,いきなり読むべき書籍ではありません。
番外編
網羅的ではなく,冗長な記載も多いです。
山野目先生の書籍らしく,1段落目が小説の一節から始まったりします。
好みが分かれますが,私は好きです。
この書籍もある程度改正法を把握していることが前提なので,いきなり読むべき書籍ではありません。
※近年の司法書士試験の法改正・最新判例などは,以下の記事にまとめています。
松本 雅典