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成年後見・保佐・補助は【この2つの視点】で整理するとスッキリ!

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単純記憶ではこんがらがる

成年後見,保佐,補助は,以下のような頭がこんがらがる知識が多く,記憶がしづらいですよね。

 

 

■同意権

1.成年後見人に同意権はない

2.保佐人には民法13条1項の行為・補助人には(同意権が付与された場合は)民法13条1項の一部の行為に同意権があり,同意が必要な行為は被保佐人・被補助人が単独で完全に有効に行うことができない(民法13条1項柱書本文,17条1項)

3.保佐人・(同意権が付与された場合は)補助人には同意権があるが,それ以外の行為は被保佐人・被補助人が単独で完全に有効に行える

 

■代理権

1.成年後見人には財産権に関するあらゆる法律行為の代理権があり(民法859条1項),成年被後見人は原則として単独で完全に有効な法律行為(契約など)を行うことができない

2.保佐人・補助人には特定の法律行為について代理権が付与されることがあるが(民法876条の4第1項,876条の9第1項),これは任意である

 

 

頭が痛くなってきそうですね…。

こんなものを単に記憶しろと言われても,難しいです。

 

 

2つの視点

記憶しづらい箇所も,「視点」を知ると一気に記憶しやすくなる場合があります。

成年後見,保佐,補助については,以下の2つの視点を知ってください。

 

 

視点1 成年被後見人,被保佐人,被補助人は単なる3段階ではない

どんな講座・テキストでも,判断能力の程度が「成年被後見人<被保佐人<被補助人」であると説明されます。

これは,そのとおりです。

 

しかし,もう少しつっこんだ理解をしてください。

これらは単なる3段階ではなく,「成年被後見人」と「被保佐人・被補助人」で大きく分かれます。

 

(『【第3版】リアリスティック民法Ⅰ』P72より一部抜粋)

 

 

視点2 同意権と代理権の違い

同意は,制限行為能力者が保護者の同意を得て法律行為をするハナシ,代理は保護者が制限行為能力者の代わりに法律行為をするハナシ,ということはご存知だと思います。

 

しかし,もう少しつっこんだ理解をしてください。

 

(『【第3版】リアリスティック民法Ⅰ』P76より一部抜粋)

 

保護者に同意権があれば,同意権のある行為については,制限行為能力者は保護者の同意がなければ単独で完全に有効な法律行為(契約など)をできないことになります。

 

それに対して,代理権は,「代理権がある=制限行為能力者が単独で完全に有効な法律行為が行えなくなる」というわけではありません。

代理権があるということは,「プラスアルファとして代理人も単独で法律行為をすることができる」ということなのです。

 

 

それでは,上記2つの視点を冒頭の知識に当てはめてみましょう。

 

 

■同意権

1.成年後見人に同意権はない

成年被後見人は,基本的に自分だけで法律行為を行えないところからの出発点です(上記の視点1)。

よって,成年後見人に同意してもらっても(補ってもらっても),自分で法律行為を行うことはできません。

 

2.保佐人には民法13条1項の行為・補助人には(同意権が付与された場合は)民法13条1項の一部の行為に同意権があり,同意が必要な行為は被保佐人・被補助人が単独で完全に有効に行うことができない(民法13条1項柱書本文,17条1項)

被保佐人・被補助人は,基本的に自分だけで法律行為を行えるところからの出発点です(上記の視点1)。

ただ,同意が必要な特に重要な民法13条1項の行為(の一部)については,保佐人・補助人の同意が必要とされます(補助の場合は補助人に同意権が付与されたときです)。

保佐人・補助人に同意権がある行為については,被保佐人・被補助人は単独で完全に有効に行うことができなくなります(上記の視点2)。

 

3.保佐人・(同意権が付与された場合は)補助人には同意権があるが,それ以外の行為は被保佐人・被補助人が単独で完全に有効に行える

被保佐人・被補助人は,基本的に自分だけで法律行為を行えるところからの出発点です(上記の視点1)。

よって,保佐人・補助人の同意が必要とされた行為以外は,単独で完全に有効に行うことができます。

 

■代理権

1.成年後見人には財産権に関するあらゆる法律行為の代理権があり(民法859条1項),成年被後見人は原則として単独で完全に有効な法律行為(契約など)を行うことができない

成年被後見人は,基本的に自分だけで法律行為を行えないところからの出発点です(上記の視点1)。

成年被後見人だけではほとんど何もできませんので,成年後見人に行ってもらう必要があります。

だから,成年後見人に代理権があるのです。

ただ,「成年後見人にプラスアルファの代理権が付与されただけだから(上記の視点2),『成年被後見人は原則として単独で完全に有効な法律行為が行えない』というのはおかしくない?」と思われるかもしれません。

これは,代理権があるからという問題ではなく,成年被後見人の出発点が自分だけで法律行為を行えないところからであるという点にあります(上記の視点1)。

 

2.保佐人・補助人には特定の法律行為について代理権が付与されることがあるが(民法876条の4第1項,876条の9第1項),これは任意である

被保佐人・被補助人は,基本的に自分だけで法律行為を行えるところからの出発点です(上記の視点1)。

特に同意が必要とされる民法13条1項の行為(の一部)以外は,単独で完全に有効に行えるので,保佐人・補助人に代理権はなくても構わないのです。

よって,代理権を付与するかは任意です。

 

 

「視点」が入ると,理解・記憶が一気に進むと思います。

 

 

 

松本 雅典

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