民法改正ばかりが注目されていますが,2019年度から出題範囲になる改正に供託規則の改正があります。
講師もブログやTwitterで言及しているのを見かけないので(見落としていたらすみません),記事にしておきます。
2019年度向け以降の基礎講座と中上級講座では必ず説明がされていますが,2018年度向け以前の講座では説明がされていないことが多いので,2019年度向け以降の講座を受講されていない方はご注意ください。
改正日・公布日・施行日
施行日改正日(*):平成30年3月13日
*当初,「施行日」と記載していました。Twitterでご指摘いただきました。ご迷惑おかけしまして,申し訳ありません。
公布日:平成30年3月13日
施行日:平成30年7月1日
よって,平成31年度(2019年度)から出題範囲です。
条文
新供託規則39条の2(供託をする場合の資格証明書等の提示に関する特則)
|
---|
2 支配人その他登記のある代理人によつて第三十八条第一号の規定による供託をする場合において、その申請書情報にその者が電子署名を行い、かつ、その者に係る前条第三項第一号に掲げる電子証明書を当該申請書情報と併せて送信したときは、第十四条第四項の規定にかかわらず、代理人の権限を証する書面を提示することを要しない。
3 前二項に規定する場合のほか、登記された法人が第三十八条第一号の規定による供託をする場合において、当該法人の会社法人等番号(商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第七条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号をいう。)がその申請書情報と併せて送信され、これにより供託官が当該法人の登記情報を直ちに確認することができるときは、登記所の作成した代表者の資格を証する書面又は代理人の権限を証する書面を提示することを要しない。
|
新供託規則39条(電子情報処理組織による供託等の方法)
|
6 支配人その他登記のある代理人によつて前条第二号の規定による払渡しの請求をする場合において、その者に係る第三項第一号に掲げる電子証明書が申請書情報と併せて送信されたときは、当該請求については、第二十七条第一項(第三十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。
|
改正の趣旨
法人が供託手続をオンラインでする際,オンラインのみで手続を完了させることを目指した改正です。
現在,政府は行政手続のオンライン化を進めています。
電子署名・電子証明書の制度はとっくに,会社法人等番号の制度は平成27年から始まっているんで,供託については遅すぎるなというくらいなんですが……。
改正内容
1.供託
供託をする場合には,電子署名も電子証明書の送信もしなくても構いません(供託規則39条3項柱書かっこ書)。
書面によって供託をする際に,供託書への押印が不要であることに合わせられています。
ただし,電子署名をして電子証明書の送信をすれば,以下の書面の提示が不要となります。
①登記された法人の代表者の資格証明書(供託規則39条の2第1項)←改正前から
②支配人などの代理権限証書(新供託規則39条の2第2項)←改正により追加
これらの者の権限は,電子証明書から確認できるからです。
また,上記①②の書面の提示は,電子署名をして電子証明書の送信をする方法以外にも,登記された法人の会社法人等番号を送信して省略することもできます(新供託規則39条の2第3項)。←改正により追加
これらの者の権限は,会社法人等番号を基に供託所のほうで調べることができるからです。
2.払渡請求
払渡請求の場合には,申請書情報に電子署名を行い,電子証明書も併せて送信する必要があります(供託規則39条3項)。
書面によって払渡請求をする際に,払渡請求書への押印が必要であること(供託規則22条2項柱書)に合わせられています。
支配人などが電子署名を行い,電子証明書を併せて送信すれば,支配人などの代理権限証書の提示が不要となります(新供託規則39条6項)。←改正により追加
これらの者の権限は,電子証明書から確認できるからです。
書面による供託は?
そうすると,書面による供託においても,会社法人等番号を提供して登記された法人の代表者の資格証明書や支配人などの代理権限証書の提示(供託規則14条1項前段,4項前段)を省略できるとしてもよさそうですよね。
そういった意見もあったのですが,書面による供託については「平成32年度(2020年度)をめどに対応することを検討」するそうです。
今回の改正は,オンライン化を進めるためなので,書面による供託については後回しってことです。
う~ん……。
※近年の司法書士試験の法改正・最新判例などは,以下の記事にまとめています。
松本 雅典