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司法試験の受験経験者の方のほとんどが司法書士試験に1回で受からない3つの理由

司法試験

以下の記事の続きの記事です。

 

司法試験の学習経験は負債だと思ってください

 

司法試験の受験経験者の方のほとんどが司法書士試験に1回で受からないのはなぜ?

 

3記事にわたりましたが,この記事でこのシリーズは終わりです。

 

前回の記事で,実体法の実力のある司法試験の受験経験者の方のほとんどが司法書士試験に1回で受からない理由として以下の3つを挙げました。

 

1.実体法と登記法とのギャップに苦しむ
2.試験に強くはない
3.モチベーションを保てない

 

1つ1つ説明していきます。

 

  • 注意

この記事は長いです。
しかし,真剣に司法書士試験を受けようか考えている方はお読みください。
これぐらいは情報として知っておいたほうがいいです。

 

 

目次

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1.実体法と登記法とのギャップに苦しむ

司法試験の受験科目は,選択科目を除き,すべての科目に学者本が豊富にあります。
それに対して,登記法(不動産登記法と商業登記法)にはほとんどありません(ちなみに,供託法と司法書士法も)。
研究している学者がほとんどいないんです。
『物権法』の山野目先生は体系書を書いてくださっていますが,あとはほとんどありません。

 

法律の通常の学習方法は,趣旨からスタートして要件や効果を記憶していきますが,それがしづらいのです。
ヒドい講義やテキストになると,ほとんど結論だけが説明されます。
ただ,実は講師が頑張って調べれば,趣旨が見つかるものも多いんですけどね。
それでも,民法や会社法よりは趣旨が少ないです。

 

また,実務のイメージも湧きにくいです。

 

そこで,「登記法は暗記するしかない」と言う講師もいます。
司法試験から転向し,司法書士試験に合格後に司法書士の講師をしている方に多いです。
もちろん,一発合格ではありません。

 

趣旨は少ないんですが,登記法は実際の手続のルールです。
それに従って,司法書士,土地家屋調査士さん,登記官などは仕事をしています。
1コ1コすべて暗記しないといけないとしたら,実際に使っている人からすると困りますよね。
よって,「一貫した考え方」はあります。
「この考え方がわかっていれば,20コの知識を記憶せずに判断できるよ」というのが最も多いのが,登記法なのです。

 

つまり,「趣旨からだけでなく,一貫した考え方から作られた記憶のテクニックを使えるか」が勝負となります。

 

私も講義で,「P◯~P◯までは,第三者の承諾は出てきません。第三者の承諾なんて1コ1コ記憶しなくていいですから。」など,記憶のテクニックをバンバン申し上げます。

 

このように,勉強法を実体法からガラっと変えられるかが勝負です。

 

 

  • 登記法のイメージ

と言われても,イメージが湧きにくいと思うので,司法試験の科目からイメージを説明します。
おそらく,民事訴訟法のイメージがすごく湧き,好きで好きでたまらないという方はほとんどいないと思います。
登記法は,「その民事訴訟法のイメージの湧かなさを引き継ぎ,学者本(趣旨)を民事訴訟法から減らすが,一貫した考え方があり記憶のテクニックが使える科目」となります。

 

 

2.試験に強くはない

私は司法試験も予備試験も受けてもいないので,申し上げる資格はないのですが,何年も受からなかったということは,「試験に強くはない」ということです。
私には申し上げる資格はないのですが,これは,旧司法試験から司法書士試験に転向し数回の受験で合格された方がおっしゃっていた言葉です。

 

試験は,強い人と弱い人がいます。
勉強できる時間のすべてを勉強に充てるのは当たり前なのですが,修正能力がどれくらいあるかがかなり重要となります。
試験に強い人は,1回落ちても,次は修正して合格します。
それができなかったということは,謙虚に「私は試験に強くはない」と思ってください。

 

よって,ご受講した講座の講師の方針に合わせてください。
「自分のやり方」は,とりあえず捨ててください。
司法書士試験の合格に関しては,司法書士試験の講師のほうが精通しているわけですから,合わせたほうが確率が上がります。

 

 

3.モチベーションを保てない

これが,最大の理由です。
これさえ克服できれば,上記1.と2.はどうにかなります。

 

法曹(多くの方が弁護士)を目指されていたわけです。
そこから下位資格にきました。
「下位」とかいうと色々なところから怒られそうですが,法律で認められた権限としては司法書士のほうが小さいのは明らかです。

 

弁護士法3条(弁護士の職務)
1 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。
司法書士法3条(業務)
1 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 登記又は供託に関する手続について代理すること。
二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第4号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。
三 法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。
四 裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続(不動産登記法(平成16年法律第123号)第六章第二節の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。第8号において同じ。)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。
五 前各号の事務について相談に応ずること。
六 簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。ただし、上訴の提起(自ら代理人として手続に関与している事件の判決、決定又は命令に係るものを除く。)、再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については、代理することができない。
イ 民事訴訟法(平成8年法律第109号)の規定による手続(ロに規定する手続及び訴えの提起前における証拠保全手続を除く。)であつて、訴訟の目的の価額が裁判所法(昭和22年法律第59号)第33条第1項第1号に定める額を超えないもの
ロ 民事訴訟法第275条の規定による和解の手続又は同法第七編の規定による支払督促の手続であつて、請求の目的の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの
ハ 民事訴訟法第二編第四章第七節の規定による訴えの提起前における証拠保全手続又は民事保全法(平成元年法律第91号)の規定による手続であつて、本案の訴訟の目的の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの
ニ 民事調停法(昭和26年法律第222号)の規定による手続であつて、調停を求める事項の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの
ホ 民事執行法(昭和54年法律第4号)第二章第二節第四款第二目の規定による少額訴訟債権執行の手続であつて、請求の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの
七 民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。
八 筆界特定の手続であつて対象土地(不動産登記法第123条第3号に規定する対象土地をいう。)の価額として法務省令で定める方法により算定される額の合計額の2分の1に相当する額に筆界特定によつて通常得られることとなる利益の割合として法務省令で定める割合を乗じて得た額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は代理すること。

 

※6号~8号は,認定司法書士のみ行えます。

 

 

下位資格に対しても同様のモチベーションを保つことは,相当難しいです。
「相当難しい」という言葉では表現できないほど。

 

そして,司法書士試験は,低いモチベーションで合格できるレベルの試験ではありません。

 

多方面からの批判を承知で申し上げますが,司法試験や予備試験の短答を突破するのと,司法書士試験の択一を突破するのを比べたら,司法書士試験のほうが難しいと思います。

 

試験科目も出題範囲も異なる試験を比べること自体ナンセンスですが,たとえば,私の知り合いの司法書士試験の合格者の方で,司法試験(新です)と予備試験の短答を受けて,足切りにかかったことが1度でもある方は1人もいません。

 

論文に受かることは容易ではないので,何年も受けている方が多いですが,短答で切られたことが1度でもある方は,私の知り合いには1人もいません。

 

もちろん,論文があるので,司法試験や予備試験のほうが難しいのですが,短答(択一)は司法書士試験のほうが大変だと思います。

 

よって,モチベーションを保てない方が一回で受かるような試験ではないのです。
そして,司法試験から転向して,モチベーションを保つことは本当に難しいです(何度も申し上げますが)。
これが,本当に大きいんです。

 

みなさんは人間だから

 

このシリーズは以上です。
このシリーズは,この記事を含む以下の3記事です。

 

司法試験の学習経験は負債だと思ってください

 

司法試験の受験経験者の方のほとんどが司法書士試験に1回で受からないのはなぜ?

 

・司法試験の受験経験者の方のほとんどが司法書士試験に1回で受からない3つの理由(この記事)

 

 

何を信じるかはみなさんにお任せします。
何を信じるのが正しいのかは,わかりません。

 

もちろん,私が申し上げている「司法試験から司法書士試験に転向して1回で合格した方は,ほとんどいない」というのは正しいです。
しかし,正しいことを信じることが正しいとは限りません

 

予備校の「資産(司法試験の学習経験)を活かして,司法書士試験を目指そう!」などという宣伝文句を信じることが,人によっては正しいかもしれません。

 

ただ,それでも私の申し上げたことを正しいと考えた方は,司法書士試験に短期合格できる確率は高いと思います。
なぜなら,そう簡単に正しいと思わないように,あえて「イラっとすること」を何点か入れたので。
それを超えてでも,何が正しいのかを真剣に考えた方が短期合格できると思っているからです。
超えるのは,おそらく20人に1人くらいだと思います。
予備校の「資産(司法試験の学習経験)を活かして,司法書士試験を目指そう!」のほうが魅力的ですから。

 

 

 

松本 雅典

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