新しい見解を説明する必要性

予備校の講義やテキストは,「学問的に古い(場合によっては間違っている)」と言われることが,よくあります。
司法書士試験についていえば,それでもあまり問題はありません。
新しい見解を知っていないと解けない問題は,基本的に出ないからです。
しかし,「条文・判例の知識を習得するうえで,新しい見解を知っておいたほうが理解しやすい点については,新しい見解を説明するべきである」というのが私の考えです。
『リアリスティック民法』も,そのような考えに基づいて書かれています。
民法の代物弁済を例に説明します。

代物弁済は要物契約?

よくある説明

予備校のテキストには,「代物弁済は要物契約です」と説明しているものがあります(私もかつては,こう説明していました)。

しかし,その後すぐに,「代物(不動産など)の所有権は,代物弁済契約の成立時に移転します(民法176条)」という説明がされます。
司法書士試験の場合,「代物(不動産)の所有権の移転の登記の登記原因日付は,代物弁済契約の成立日である」(*)という論点が不動産登記(記述)で出題されるため(平成10年度の記述で出題),どの講座でも必ず説明がされる論点です。
*代物弁済を原因とする抵当権の抹消の登記の登記原因日付は,所有権の移転の登記の申請日(対抗力を備えた日)です。債務の消滅の効果発生が代物の対抗要件の取得時まで遅らされているのは,債権者が対抗要件を取得する前に,債務者が代物を二重譲渡し債権者が代物を取得できなくなる危険性があるからです。債権者が対抗要件を取得すれば,二重譲渡の危険性はなくなります。 
いきなり矛盾した説明がされるわけです。
代物弁済は,以下の時系列となります。
①債権者と債務者の合意
  ↓
②代物の給付
  ↓
③債務の消滅
「②で所有権が移転する要物契約です」と説明した直後に,「①で所有権が移転します(不動産登記の申請情報の登記原因日付も①です)」と説明するわけです。

近年の学説

上記の説明は従来の通説に従ったものであるため,矛盾がおきます。
近年の学説は,以下のように考えています(現在の判例もこの考え方に近いと考えられています)。 

   
代物弁済は,以下の流れをたどります。
①債権者と債務者の合意
  ↓
②代物の給付
  ↓
③債務の消滅
かつての通説は,代物弁済を要物契約と考えていました。
この見解に従って代物弁済を要物契約としているテキストもあります。
しかし,①の時点で代物の所有権が移転するわけですから,②の代物の給付がないと契約が成立しない要物契約であるという説明は苦しいです。
そこで,近年の学説は,代物弁済は要物契約ではなく,上記①~③のプロセスだと考えます。
現在の判例もこの考え方に近いです。
よって,このテキストも,要物契約ではなく,上記①~③のプロセスだという見解を採っています。
(『司法書士試験 リアリスティック民法Ⅲ[債権・親族・相続]』P143「Realistic 7」をブログ記事用に少し修正しました)
 

代物弁済を,要物契約ではなく,上記①~③のプロセスだと考えるのです。
これが,『司法書士試験 リアリスティック民法Ⅲ[債権・親族・相続]』の説明方法です(法学部の学生の方や司法試験の受験生の方向けですが,たとえば,『債権総論』(中田裕康)P361に詳しい説明があります)


要物契約にこだわらない説明方法のほうが,理解しやすい(少なくとも矛盾は生じない)のではないでしょうか。

どのような講義・テキストが好ましいか?

私は,決して「私はこんなに勉強しているんですよ。こんな新しい見解があって,他にもこんな……」といった講義やテキストが好ましいと思っているわけではありません。


しかし,代物弁済のように,古い説明では矛盾が生じて理解できない点は,新しい見解を説明するべきです。
要物契約と説明している講師が,間違っていると申し上げたいわけでもありません。
しかし,きちんと勉強している講師は,講義・テキストで説明していない知識も膨大に有しています。
1.バックグラウンドに膨大な知識があったうえで,理解するのに必要なことに絞って説明する講師

2.バックグラウンドに知識がなく,自分の知識を説明するだけの講師
では,似たようなことを説明しているようにみえても,まったく異なります。
私が1.になっているかは,まだまだ自信がなく
(一応,要物契約で説明していた時も「この説明は苦しいです」とは申し上げていました),もっともっと勉強しなければなりません
しかし,『リアリスティック民法』は,私なりに,バックグラウンドの知識から,理解するのに必要な場合は新しい見解も書いて,可能な限り矛盾が生じない(理解しやすい)説明をしたテキストです。
 

   

 

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松本 雅典
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