民法(債権法)改正に伴い,会社法・商法で改正された規定もあります。
民法改正の他の法令への影響についてのまとめはあまりないと思いますので,まとめておきます。
会社法・商法の主な改正点は以下のとおりです。
会社法
1.設立時発行株式,設立時募集株式,募集株式の引受けの取消しの制限
錯誤が取消事由になります(新会社法51条2項,102条6項,211条2項)。
2.反対株主の株式買取請求がされた場合,全部取得条項付種類株式の取得の際に裁判所に対する価格の決定の申立てがされた場合,特別支配株主の株式等売渡請求の際に裁判所に対する価格の決定の申立てがされた場合の利息の利率が変動制の年3%に
下記「商法」の1.で説明しますが,商事法定利率(年6%)は廃止されます(新商法514条)。
よって,会社法の利率も,民法と同じく変動制の年3%になります(新会社法117条4項,182条の5第4項,470条4項,786条4項,798条4項,807条4項,172条4項,179条の8第2項)。
3.詐害事業譲渡,詐害分割の期間制限の長期が10年に
民法の詐害行為取消訴訟の提訴期間の長期が10年とされます(新民法426条後段)。
それに伴い,詐害事業譲渡,詐害分割の期間制限の長期が10年になります(新会社法23条の2第2項後段,759条6項後段,761条6項後段,764条6項後段,766条6項後段)。
なお,商法の改正ですが,詐害営業譲渡の期間制限の長期も10年になります(商法18条の2第2項後段)。
商法
1.商事法定利率の廃止
民法の法定利率が,変動制の年3%になります(新民法404条)。
それに伴い,商事法定利率(年6%)が廃止され(新商法514条),商行為によって生じた債務についても民法が適用されて変動制の年3%になります。
2.商事売買の瑕疵担保責任が契約不適合責任に
民法の瑕疵担保責任が,契約不適合責任になります(新民法562~566条)。
それに伴い,商事売買の瑕疵担保責任も契約不適合責任になります(新商法526条2項,3項)。
3.商事消滅時効の廃止
民法の消滅時効期間の短期が5年間となります(新民法166条1項1号)
それに伴い,商事消滅時効(5年間)が廃止され(新商法522条),商行為によって生じた債権についても民法が適用されるようになります。
2020年度以降向けの講座や今年発売された会社法・商法のテキストは,これらの改正に対応しています。
※近年の司法書士試験の法改正・最新判例などは,以下の記事にまとめています。
松本 雅典