強制性交等罪などの平成29年の刑法の改正

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近年の性犯罪の現状に合わせるため,平成29年6月に刑法の性犯罪関係の改正がされました。

 

 

目次

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成立日・公布日・施行日

平成29年6月16日成立

平成29年6月23日公布

平成29年7月13日施行

 

よって,平成30年度(2018年度)以降の司法書士試験の試験範囲です。

 

 

条文

改正された全条文は,以下のページからご覧いただけます。

 

新旧対照条文(PDF)【法務省】

 

この記事では,特に重要な強制性交等罪(旧強姦罪)の改正をピックアップして説明します。

 

 

強制性交等罪

 

【旧規定】

旧刑法177条(強姦)

暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は,強姦の罪とし,3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も,同様とする。

 

【新規定】

新刑法177条(強制性交等)

13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いて性交,肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は,強制性交等の罪とし,5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し,性交等をした者も,同様とする。

 

 

改正点1 ―― 被害者に男性を追加

旧刑法177条に「女子」とあるとおり,改正前の強姦罪の被害者になり得るのは,女性のみでした。

男性に対する強制的な性行為は,強制わいせつ罪(刑法176条)などとされていました。

 

しかし,新刑法177条に「者」とあるとおり,男性も被害者になり得ると改正されました。

男性が強制的な性行為の被害者になることもあり(ex. 男性が男性に襲われる),その精神的・身体的苦痛は,女性が被害者になった場合と同じく保護すべきと考えられたからです。

性被害の事件なのでリンクを貼ることは控えますが,加害者:男性,被害者:男性の事件で,すでに逮捕者が出ているようです。

 

この改正で,刑法177条の保護法益は,「女性の性的自由」から「人の性的自由」に変わりました。

 

 

改正点2 ―― 行為に「肛門性交」「口腔性交」を追加

旧刑法177条に「姦淫」とあるとおり,改正前は姦淫行為に限定されていました。

 

しかし,以下の行為が強制性交等罪の対象となり,処罰範囲が広がりました。

 

①「性交」

②「肛門性交」

③「口腔性交」

 

②③は,改正前は,強制わいせつ罪(刑法176条)の対象でした。

しかし,①と同じくらいの悪質性・重大性がありますので,重い強制性交等罪の対象となりました。

 

 

改正点3 ―― 法定刑の引上げ

法定刑は,改正前は「3年以上の有期懲役」でした。

 

しかし,「5年以上の有期懲役」に改正されました。

極めて悪質な犯罪であり,被害者は一生心に傷を負うことになりますから,当然でしょう。

 

ただ,司法書士試験では,基本的に各犯罪の刑罰は出ないので,試験的には重要ではありません。

 

 

改正点4 ―― 非親告罪に

改正前は,親告罪でした。

性犯罪に遭ったことを知られたくない人もいるからです。

 

しかし,非親告罪に改正されました(旧刑法180条の削除)。

告訴するかの選択を被害者が迫られていると感じる場合がある,被害者が告訴を選択したことによって加害者から報復を受ける不安を持つ場合があるなど,親告罪であったために,被害者の負担が大きかったことと,告訴されないために公訴提起されない加害者がいたからです。

被害者のプライバシーの問題があるのですが,捜査や公判の進め方を工夫する,被害者の支援を充実させるといった方法で対応するとされています。

 

なお,非親告罪への改正は,強制わいせつ罪などもされています(旧刑法180条の削除)。

 

 

*平成28年6月1日に施行された「刑の一部執行猶予」の改正(新設)については,以下の記事をご覧ください。執行猶予は,そろそろ出ます。

 

 

 

 

※近年の司法書士試験の法改正・最新判例などは,以下の記事にまとめています。

 

 

 

 

松本 雅典

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