まだまだ「この記載からこれが想定できる」という話はあるのですが,あまり書くと受講料をお支払いいただいた方に申し訳ないですし,みなさんも飽きてきたでしょうから,今回でいったん最後にします。
・午後の試験開始直後に名変登記がない可能性を想定しましたか?
・課税標準の額の記載から所有権移転の登記がない可能性を想定できたでしょうか
- 記載する内容
後出しジャンケンはしません。
【省略】から権利変動を想定
「省略」は,以下のいずれかの用途で使われます。
1.どうでもよい情報なので「省略」とする
権利変動とは関係のない契約書の記載などが該当します。
注意していただきたいのは,2です。
「別紙に『省略』とあったら,ヒントになっている可能性があるから,絶対に注意してください」という説明は,講師が必ずしていたはずです。
なぜなら,上記2の出題は何回もあるからです。
たとえば,平成22年度の別紙5(抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更の契約書)の「所有者」は(省略)とされていました。
その前に所有権が移転しているので,答えを書きたくなかったのでしょう。
他の例を挙げると,平成21年度の別紙6(債務弁済証書)の不動産の表示,別紙9(抵当権設定保証委託契約書)の不動産の表示も(省略)となっていました。
平成21年度は,他の別紙には不動産の表示が記載されているのですが,この2つのみ不動産の表示を(省略)としました。
理由は,賃借権が敷地権である区分建物の出題であり,抵当権の効力が賃借権である敷地権に及んでいないことを隠したかったからです。
このような出題実績がありますので,講師が説明しないわけがないのです。
今年度は,たとえば,別紙6(極度額増額の根抵当権変更契約証書)の設定者,別紙7(債務者変更などの根抵当権変更契約証書)の設定者が【省略】とされていました。
「人物に【省略】が使われていれば,上記2(ヒントを隠す)の確率が非常に高い」という説明も,講師から受けていたと思います。
「設定者」を【省略】としていますから,「所有者が変わる確率が高いな」と想定できたでしょうか。
所有者が変わる可能性があるから,【省略】として隠しているのです。
そして,「甲土地の所有者が変わる可能性があるな」と想定できたでしょうか。
なぜなら,前回の記事に書きましたとおり,「乙建物について課税標準の額が問題となる登記(所有権保存の登記,所有権移転の登記,地上権設定の登記など)がない」と想定できているので,所有者が変わるのは,甲土地であると考えられます(※)。
※所有権更正の登記であれば,課税標準の額は不要であることも多いので,乙建物について所有権更正の登記がある可能性はありますが。
前回の記事に書いた内容と今回の記事の内容から,「甲土地の所有者は変わり,乙建物の所有者は変わらないな」と非常に強く推定できたはずです。
ちなみに,私の解法は,「まず依頼や問は完全に無視し,登記記録の権利関係を把握し,次に別紙の『当事者』『題名』『不動産の表示』のみを把握する(別紙の他の記載はこの段階では無視)」というものですので,不動産登記(記述)に入って数分で,前回の記事に書いた内容と今回の記事の内容の推測ができます。
こういうことを何個も積み重ねる対策をしますので,「最後に行う別紙と事実関係の検討の前に,7~8割の申請する登記を想定できる」というのも納得していただけるのではないかと思います。
記述の過去問を分析すると,色々なヒントが見えてきます。
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