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【最新先例(平30.3.16民二.136)】異順位の共同相続人の間で相続分の譲渡がされた後に遺産分割協議が行われた場合における所有権の移転の登記の可否について

法改正・最新判例・先例・登記研究 - 不動産登記法

すでに姫野先生が書かれていますが,相続登記について新しい先例が出ています。

 

 

平成30年3月16日法務省民二第136号

甲不動産の所有権の登記名義人Aが死亡し,その相続人B,C及びDによる遺産分割協議が未了のまま,更にDが死亡し,その相続人がE及びFであった場合において,B及びCがE及びFに対してそれぞれの相続分を譲渡した上で,EF間において遺産分割協議をし,Eが単独で甲不動産を取得することとしたとして,Eから,登記原因を証する情報……として,当該相続分の譲渡に係る相続分譲渡証明書及び当該遺産分割協議に係る遺産分割協議書を提供して,「平成何年何月何日(Aの死亡の日)D相続,平成何年何月何日(Dの死亡の日)相続」を登記原因として,甲不動産についてAからEへの所有権の移転の登記の申請があったときは,遺産の分割は相続開始の時にさかのぼってその効力を生じ(民法……第909条),中間における相続が単独相続であったことになるから,他に却下事由が存在しない限り,当該申請に基づく登記をすることができると考えますが,いささか疑義がありますので照会します。

 

貴見のとおり取り扱われて差し支えありません。

 

 

目次

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事案

姫野先生が以下の図を描かれていますが,私も描いておきます(私は字が汚いのでデータで……)。

 

 

 

 

 

 

理由

先例の照会に「遺産の分割は相続開始の時にさかのぼってその効力を生じ(民法……第909条)」「中間における相続が単独相続であったことになる」という理由が書かれていますが,これは以下の意味です。

 

 

AとDの2つの相続がありますので,2つの遺産分割協議が必要です。

この2つの遺産分割協議をEFが同時に行っています。

 

 

・第一の相続(Aの相続)についての遺産分割協議

本来,Aの相続人であるB,C,Dが行う必要があります。

これを以下の者が行っています。

 

B → 相続分の譲渡を受けたE

C → 相続分の譲渡を受けたF

D → Dを相続したEおよびF

 

相続分の譲受人は,遺産分割協議の当事者の地位を有すると解されています(多数説。大阪高決昭54.7.6)。

 

・第二の相続(Dの相続)についての遺産分割協議

Dの相続人EおよびFが遺産分割協議を行っています。

 

 

第一の相続(Aの相続)についての遺産分割協議でDが相続することになり(単独相続となり),第二の相続(Dの相続)についての遺産分割協議でEが相続することになったということです。

所有権の移転の登記でも,中間が単独相続なら1件で相続登記ができます。

 

 

cf.平成4年3月18日民三.1404

今回の先例は,この先例(平4.3.18民三.1404)とは異なる事案ですので,ご注意ください。

平4.3.18民三.1404は,以下の事案です。

*実際の事案はもっと複雑ですが,簡略化しています。

 

 

(『リアリスティック不動産登記法Ⅰ』P274~275から一部抜粋)

 

 

※近年の司法書士試験の法改正・最新判例などは,以下の記事にまとめています。

 

 

 

 

松本 雅典

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