・何のために会社法を改正したの?(2)-平成26年改正会社法
・何のために会社法を改正したの?(3)-平成26年改正会社法
今回の会社法の改正を以下の3つに分類してご説明しています。
1.大企業のコーポレート・ガバナンスの改正
2.親子会社関係の整備
3.その他会社法施行後に浮かび上がった問題点の改正
昨日の記事で,上記3の具体例として「監査役の監査の範囲が会計に限定されている旨が,登記事項となる(改正会社法911条3項17号イ)」という話をしました。
そして,「キャッシュ・アウト」とは,…というところでテキストの改訂作業に戻ったので(毎年,全テキストを改訂しています),今日は続きを書きます。
※改正会社法の条文は,以下の新旧対照条文をご覧下さい。
「キャッシュ・アウト」とは,その名のとおり,「少数株主に,現金(キャッシュ)を持って,株式会社から出て行ってもらうこと(アウト)」です。
現金を持って出て行ってもらう方法以外にも,少数株主を追い出す方法はあるんですけどね。
このキャッシュ・アウトに使える会社法の制度は,どのようなものがあるでしょうか?
※こういうこと(この目的を達成するために,どの制度が使えるか?)を考えるのが,実は,会社法の学習で最も楽しいんです(多分,私だけの主観ではないはず)。残念ながら,司法書士試験対策としては,あまり時間を割けませんが。「この目的を達成するために,どの制度が使えるか?」って,聞いただけで知的好奇心をくすぐられませんか? くすぐられた方は,合格後に以下の書籍を読んでみて下さい。
(注)現状,改正会社法には対応していません。また,司法書士試験対策としては,この書籍の情報量では不十分ですし,不要な知識も記載されています。ただし,会社法を楽しむという意味では現在最もお薦めできる書籍だと私は考えていますので,合格後にどうぞ。それか,司法書士試験対策としてではなく(もちろん,司法書士試験対策にならないわけではありませんが),基準点前後の点数の方であれば,趣味としてお読みになるのはよいと思います。司法書士試験対策は,予備校本にして下さいね。
キャッシュ・アウトを行うには,たとえば,以下の制度が使えます。
Ⅱ 株式交換
Ⅲ 全部取得条項付種類株式
ⅠおよびⅡは,組織再編の厳格な手続が必要となります。
しかし,ⅢおよびⅣは,それが不要です。
ⅣよりはⅢが圧倒的に多く使われています(Ⅳは税法上の問題があります)。
このⅢは,記述で出ると私は考えています。
よって,毎年,記述の講義では,全部取得条項付種類株式を使用した少数株主の追い出しの事例を扱います。
そろそろ出るのではないでしょうか。
簡単にいうと,以下のように行います。
※全部取得条項付種類株式を使って少数株主を追い出す方法
② 特別決議で全部取得条項付種類株式を取得する(このとき,取得の対価を株式以外にすれば,少数株主を追い出すことができます)
なぜこれが可能かというと,全部取得条項付種類株式は「どこまでいっても特別決議」でしたよね。
(取得条項付株式と異なり)定めを設けるときも,取得するときも,特別決議で可能です。
なお,上記に募集株式の発行等を絡める出題も考えられます。
ということで,現状の制度でもキャッシュ・アウトは行えるのですが,以下のような問題点がありました。
ア 「全部取得条項付種類株式」や「株式の併合」だと,必ず株主総会の特別決議が必要となる
イ 現状の制度では,少数株主の保護が不十分である
そこで,以下のような改正を行いました。
ア→「特別支配株主の株式等売渡請求」という制度を創設(キャッシュ・アウトのために創設された制度です)
イ→ 情報開示や差止め権など,全部取得条項付種類株式などについても,少数株主の保護の制度を整備
これで,改正会社法に関する記事は,一区切りです。
まとめてお読みになりたい方は,以下の順番でお読み下さい。
・何のために会社法を改正したの?(4)-平成26年改正会社法
ただし,各記事で例として挙げたのは,改正事項の一部である点はご注意下さい。