知らないと軸肢にして間違える可能性がある先例

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出題されたときに知らないと,誤った判断をした肢を軸肢にしてしまう(=ほぼその問題を間違える)可能性がある先例があります。

 

 

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平成25年12月12日法務省民二第809号

この先例です。

 

 

平成25年12月12日法務省民二第809号

所有権の移転の登記において,登記義務者の住所に変更がある場合でも,登記義務者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(いわゆるDV防止法)に規定する被害者として支援措置を受けている者であるときは,所有権の移転の登記の前提として,登記義務者の住所変更の登記をすることを要しない
上記のように,住所変更の登記を省略して所有権の移転の登記をする場合には,登記義務者の住所の変更があったことを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては,これに代わるべき情報)及び支援措置を受けていることを証する情報を提供しなければならない。 

 

 

例外的な事例ですが,所有の権移転の登記において,登記義務者に住所変更があるにもかかわらず,前提として住所変更登記を省略できるという先例です。

「所有権移転の登記の登記義務者の名変は省略できない」とだけ記憶していると,この先例が出たときに,その肢を軸肢にして間違えてしまうと思われますので,知識として入れておいてください。

例外的な事例ですので,いきなり記述で出る確率はかなり低いと思いますが…。

 

 

理由

いわゆるDV防止法に規定する被害者として支援措置を受けている方が住所変更登記をしてしまうと,DVをしている配偶者に住所がバレてしまうからです。

DVの被害にあった方で,ダンナさん(奥さんがDVをするケースも増えてきていると言われていますが,ダンナさんがDVをしている事案でイメージしてください)から逃げるため,避難している場合があります。

その奥さんが不動産を売却する場合,本来であれば転居していますので,住所変更登記が必要となります。

 

しかし,不動産登記は公開されていますので,誰でも600円や500円支払えば,登記事項証明書を取得できてしまいます。

住所の変更の登記をしてしまうと,登記記録に付記登記で転居先の住所が記録されることになります。

つまり,DVをしているダンナさんが登記事項証明書を取得すれば「ここに引っ越したんだ」と知ることができてしまうんです。

DVをしている人は相手に対する依存度が高いので,必死で追いかけてくることが多いです。

「ダンナさんに転居先をバレないようにするために特別な扱いを認めた先例」ということです。

 

 

その他

DVの被害者の方以外に,「ストーカー行為等の相手方」「児童虐待を受けた児童等」が措置を受けている場合に,これらの者が所有権移転の登記をする前提としての住所変更登記についても,同様に省略できます(平成25年12月12日法務省民二第809号)。

また,所有権の移転の登記のほか,抵当権その他の権利の移転の登記についても同様に省略できます(平成25年12月12日法務省民二第809号)。

 

 

 

※近年の司法書士試験の法改正・最新判例などは,以下の記事にまとめています。

 

 

 

 

松本 雅典

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