近年の憲法の出題傾向

近年の憲法は,学説問題が出題されなくなり(H25-2以来なし),その代わりに(?)統治の条文問題が出題されています(H26-2,H27-2,H28-3)。

よって,「憲法では毎年学説問題が出る」というのは,近年の問題を見ていない人の誤った情報ですので,ご注意ください。

むしろ「憲法では毎年統治の条文問題が出る」のほうが,近年は正しいです。

 

 

統治の条文問題の対策

統治の条文問題は正答率がよくないので,対策を考える必要があります。

一般的な対策は,以下の1.と2.です。

 

1.制度趣旨から条文を理解する

統治も,実はかなり背景的な理論があります。

たとえば,『憲法学読本』(第2版。安西など)は,「統治の総論」を設けており,20ページ以上にわたって(P243~265)統治の背景的な理論を説明しています。

私の講義も,この本を参考にしている理由がけっこうあります。

 




 

行政書士試験の山田先生の講座では,この『憲法学読本』を使うそうです(この本で講義ができる講師はほとんどいないと思います……)。

 

 

2.問題や条文の音読を繰り返す

この2.の対策をしている人が多いでしょうか。

 

 

3.思い出し方を考える学習をする

上記1.および2.の対策は,引き続き続けてください。

 

しかし,それだけで本試験で高い確率で思い出せるでしょうか?

制度趣旨を理解して,何回も問題や音読を繰り返しても,「『過半数』だっけ? 『3分の1』だっけ?」などとなりませんか?

 

たとえば,以下の肢。

 

 

平成26年度・第2問
2 両議院は,それぞれその総議員の3分の1以上の出席がなければ,議決をすることができないだけでなく,議事を開くこともできない。

 

 

この2の肢は,単純正誤問題の正解肢(正しい肢)です。

この問題は,この2の肢の判断ができたかが正解できたかを決めました。

 

憲法56条1項を聞いていますが,以下の2点で悩まれると思います。

 

 

・「総議員の3分の1以上」

→「『過半数』だったような気も……」

 

・「議事を開くこともできない」

→「こんな文言あったっけ?」

 

 

肢をジーっと見て考えていても,思い出せません(経験があると思います)。

しかし,事前に思い出し方を決めておけば一発で思い出せます。

 

 

憲法56条1項の思い出し方

最高(サ〔3〕イ〔1〕コー)の国会ひらけない

(『Realistic Text 憲法』P126)

 

 

「最高」は,「国会は,国権の最高機関」と定めた憲法41条から持ってきています。

*憲法41条の「最高機関」は,法的意味がないと考えるのが通説ですが(政治的美称説)。

 

この印象に残るフレーズから思い出すと決めておけば一発です。

 

 

もう1つ例を挙げます。

 

 

平成28年度・第3問
ウ 下級裁判所の裁判官は,司法権の独立の観点から,最高裁判所によって任命される。

 

 

内閣が任命するため(憲法80条1項前段)誤りの肢ですが,パッと出てこない可能性がありますよね。

上記1.の「制度趣旨から条文を理解する」からの対策だと,「三権が互いに抑制し合うために,内閣には,最高裁の長官以外の裁判官と下級審の裁判官の任命権がある」という趣旨から思い出すことになります。

しかし,「内閣は,最高裁の長官以外の裁判官は任命するけど,下級審の裁判官まで任命したっけ?」などとなりませんか?

そこで,思い出し方です。

 

 

憲法79条1項・憲法80条1項前段の思い出し方

裁判官は,「な(内閣)~に(任命)~」と思っている

(『Realistic Text 憲法』P146)

 

 

なお,「天皇が任命するかも?」と悩む場合もあります。

また,最高裁の長官は天皇が任命しますので,その点は上記の思い出し方だけでは対処できません。

これらの問題には,以下のルールで対処します。

 

Realistic rule

憲法上,三権のトップ(※)以外を天皇が任命することはありません。

※立法の衆議院議長・参議院議長の任命手続はありません。

(『Realistic Text 憲法』P141)

 

天皇陛下に任命してもらえるのは,2人だけ(内閣総理大臣と最高裁の長官)ってことです。

 

これで,裁判官の任命は,すべて思い出し方を考えたことになります。
私は,このように思い出し方を決め,統治の条文を潰していきます(もちろん,制度趣旨も説明します)。

 

 

制度趣旨から条文を理解することや問題や条文の音読を繰り返すことが,一般的に勧められます。

しかし,制度趣旨から理解しても細かい点を思い出せないかもしれませんし,繰り返しても次も同じ間違いをするかもしれません。

私は,「本番で『どっちだったっけ?』と迷ったときに備えて『どうやって思い出すか』を考えること」が,試験対策としてかなり大事だと考えています。

 

憲法の統治の条文ではこの対策を多用します。

キャッチフレーズやゴロ合わせなど,「法律の本来の学習法にそぐわない」と言われるかもしれません。

 

しかし,それで正解できるならば,それが「正義」です。

普通は,「正義」なんて存在しません。

みんなが「自分が正義だ」と言うから,モメるんです。

ですが,試験においては,点数を獲ることが「絶対的な正義」です(不正行為はダメですが)。

 

 

 

松本 雅典