あえてこの時期に読んでほしい「法学」―法とは何か?で「法とは国家権力によって強制的な実現が可能であるルールである」とご説明しました。
その具体例として,民法587条の金銭消費貸借の話を挙げました。
今回は,金銭消費貸借の例で「要件」「効果」についてご説明していきます。

「要件」「効果」とは?

「法とは国家権力によって強制的な実現が可能であるルールである」,つまり,(民事でいうと)「自己の権利を,裁判所を使って実現できるためにある」という視点からご説明していますので,「効果」のほうから考えます。
なぜ効果から考えるかというと,「効果が発生する」ということが,前回の記事でご説明した「法的根拠がある」に当たるからです。
例として取り上げている民法587条でいえば,貸主は「貸金返還請求権がある」という効果(法的根拠)を裁判所に認めてもらうことによって,望んでいる「1000万円を返せ」という請求を国家権力である裁判所に認めてもらえるのです。
では,この効果を裁判所に認めてもらうには,何が必要でしょうか。
それは,「要件」です。
「要件」は,法律効果を得るために必要な要素です。
要件が揃えば,法律効果が生じます(これが法律の基本的な考え方です)。
要件は,基本的には条文に書かれています(効果は書かれていないことも多いのですが)。
例として取り上げている民法587条を見てみましょう。

民法587条(消費貸借)
消費貸借は,当事者の一方が種類,品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって,その効力を生ずる。

以下の2点が条文に書いている要件です(実際の訴訟ではあと数点要件事実が増えるのですが,今回は記憶していただくのが趣旨ではありませんので細かいところは省略します)。
1.「返還をすることを約して」(返還約束)
2.「
受け取ることによって」(金銭授受)

裁判ではどうする?

貸金返還請求権(効果,法的根拠)の発生に必要な要件がわかりました。
「バンザイ。これで『1000万円返せ』という判決がもらえる」と思うのは,まだ早いです。
民法だけだとここで終わるのですが,今回は「法とは国家権力によって強制的な実現が可能であるルールである」という視点から見ています。
実は,裁判規範の視点から民法を見ているのです。
裁判規範とは,「裁判の際に根拠となるルール」という意味です。
(今回の話をわかりやすくするために,あえてかなり乱暴な表現を使いますが)裁判を考慮しないのならば,民法なんて考えなくていいんです。
たとえ,借主が約束の日に返さなくても,貸主がそれでよいなら放っておけばいいのです。
民法では,貸主が「返さなくていいよ」と言ったことが,「債権の放棄」だの「債務の免除」だのになりますが,当事者が構わないのなら「放棄」だの「免除」だの考える必要はありません。
よって,民法は裁判規範(裁判のルールとなる)の面が重要であり,「裁判ではどうする?」という視点から考える必要があります。
それでは,「裁判で貸金返還請求権を認めてもらうには?」という話をしていきましょう。

事実レベル

「貸金返還請求権」なんてものは,実際に物体として世の中にあるわけではありません。
裁判官も見たことはありません。
よって,「オレには貸金返還請求権がある」と言っている貸主のことを裁判官がそのまま信じるわけにはいきません(貸主がどんなに信用できそうな顔をしていても)。
そこで出てくるのが,「要件」です。
要件が揃えば効果が発生しますので,貸金返還請求権を裁判所が認めることができます。
その要件が,民事訴訟法で学習する「主要事実(要件事実)」です(主要事実と要件事実の違い〔違いがあるか〕は気にしなくていいです)。
民事訴訟法の講義で説明される以下のピラミッドでいえば,要件は3の「事実レベル」に当たります。

150218民訴の4段階構造

  

証拠レベル

要件があればよいということがわかりました。
しかし,「要件がある」と言っている貸主のことを裁判官がそのまま信じるわけにはいきません(貸主がどんなに信用できそうな顔をしていても)。
要件を認めてもらうために,何が必要でしょうか。
裁判所にいる裁判官にとっては,原告と被告の間の「返還約束」や「金銭授受」なんて,知ったこっちゃありません。
そこで,「証拠」により裁判官に要件があることを信じてもらいます。
たとえば,契約書を出して,「返還約束したんですよ~」と裁判官を信用させます。 
これが,上記のピラミッドでいえば,4の「証拠レベル」に当たります。

まとめ

前回の記事と今回の記事をまとめます。
前回の記事で「1000万円を返せ」という請求権がある(上記のピラミッドでいえば,1の「請求レベル」)と裁判所に認めてもらうには,法的根拠(2の「法律レベル」)が必要であるとご説明しました。
そのためには要件を充たす必要があり(3の「事実レベル」),要件を充たしていると裁判官に信用してもらうには証拠が必要である(4の「証拠レベル」)とご説明しました。
これが裁判規範から考えた思考ですので,前回の記事も合わせて,再度理解する姿勢でお読みいただければ幸いです。 


 
 
松本 雅典
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