前回,平成26年改正会社法の基本情報を確認しました。
今日は,改正会社法の趣旨,つまり,「何のために改正されたのか?」という話をしていきましょう。
学習の基本は,まず全体像を“ザッと”把握することです。
もちろん,具体的な内容をほとんど学習していない段階ではわからないことが多いのですが,その状態でも全体像を“ザッと”把握することは重要です。
辰已法律研究所さんの司法試験の講師である西口先生は,入門講座の各科目の初回において,その科目の全体像を説明するところから初めますが(現在も同様の方式で講義をされているかは未確認です),これは理にかなっていると思います。
※私は,司法書士試験合格後に,少し司法試験の受験勉強をしたため,西口先生の入門講座を拝聴しました。
ということで,今回の改正会社法についても,「何のために改正されたのか?」をザッと確認しましょう。
※私は,今回の改正会社法について,「ほとんどの改正事項の趣旨(なぜ改正されたのか?)をご説明できるレベル」にはしていますので,その点はご安心下さい。今年度の講座について,「改正事項の趣旨」をあまり説明できない講師は,“勉強不足”と判断していただいて結構です。ほとんどの改正事項について,「なぜ改正が必要だったのか?」ということはいくらでも知ることができるので,説明できない講師は,明らかな勉強不足です。 
色々な分類方法がありますが,私は今回の改正を以下の3つに分類して捉えています。
1.大企業のコーポレート・ガバナンスの改正
2.親子会社関係の整備
3.その他会社法施行後に浮かび上がった問題点の改正

1.大企業のコーポレート・ガバナンスの改正
大企業の不祥事が相次いでいることは,みなさんご存知でしょう。
オリンパスや大王製紙の事件が有名でしょうか。
「さあ改正しよう」となったときには,みずほ銀行の不祥事も発覚しましたが。
この大企業の不祥事の対策として,コーポレート・ガバナンスに関する改正がされました。
※「コーポレート・ガバナンス」とは,「企業経営の仕組み」「企業統治」などと訳されますが,簡単にいうと,「どのような機関構成で企業を運営していくか?」などということです。監査役会設置会社にするのか,委員会設置会社にするのかなどは,コーポレート・ガバナンスの話に含まれます。
ということで,主な対象は「大企業」(上場企業など)です。
そのため,(少し話がズレますが)今回の改正は,司法書士実務にはあまり影響はありません。
ほとんどの事務所の依頼者は,中小企業ですので(もちろん,中小企業が,以下でご説明する監査等委員会設置会社を利用することも可能です。そんな中小企業はないでしょうが)。
しかし,試験では双方とも出題されますので,受験生のみなさんには「あまり影響はない」とは言えません。
この「1.大企業のコーポレート・ガバナンスの改正」に分類されるものには,たとえば,以下の改正があります。
※改正会社法の条文は,以下の新旧対照条文をご覧下さい。
新旧対照条文(PDF)

公開会社・大会社・監査役会設置会社である上場企業(正確な定義は改正会社法327条の2をご覧下さい)が社外取締役を置いていない場合には,定時株主総会において,社外取締役を置くことが相当でない理由を説明する必要がある(改正会社法327条の2)
当初は上記の会社において,社外取締役を必置にしようとしていたのですが,必置にはなりませんでしたので,このような妥協点での改正となりました。
必置とならなかったのは,経済界の反対などがその理由です(経団連って,まだ力があったんですね…)。
・社外取締役・社外監査役の要件の厳格化・一部緩和(改正会社法2条15号,16号)
・監査等委員会設置会社の創設(改正会社法2条11号の2)

「監査役会設置会社では,適切な監査ができない。しかし,委員会設置会社は,利用企業が少ない」というのが現状です。
上場企業でも,100社に満たないのです。
導入している有名企業には、ソニー、三菱電機、日立グループなどがあります(あとは、みずほが昨年の不祥事を受け、今年の株主総会で導入しました)。
委員会設置会社(改正により「指名委員会等設置会社」と名称が変更されました〔改正会社法2条12号〕。以下,「指名委員会等設置会社」といいます)の利用が少ないのには,以下のような理由が考えられます。
Ⅰ 社外取締役を入れないといけないので,その企業で平社員から努力してきた者の役員の席が減る
Ⅱ 指名委員会等設置会社は強力な監視体制を採るアメリカ型の会社形態であるため,従来の日本企業の体質と合わない
Ⅲ 指名委員会に人事権を,報酬委員会に役員の報酬決定権を握られる(つまり,過半数が外部の者〔社外取締役〕である委員会に人事・報酬を握られる) 

そこで,指名委員会等設置会社の導入促進は諦め(?),もう少し軽い監査等委員会設置会社という形態を設けました。
雑にいうと,指名委員会等設置会社の指名委員会・報酬委員会を除いたものです。
企業が「監査等委員会設置会社を導入しよう」と思う要素は,いくつか用意されています。
たとえば,監査等委員会設置会社には指名委員会・報酬委員会がありませんので,上記Ⅲの過半数が外部の者(社外取締役)である委員会に人事・報酬を握られるということがなくなります。
他にも導入促進の要素はあるのですが、長くなるので、とりあえず省略します。
なお、監査等委員会設置会社は「ぜひ導入してね」という意味で設けられましたので,監査等委員会設置会社にならなければならない株式会社は存在しません。
この点は、指名委員会等設置会社と同様ですね。
この「1.大企業のコーポレート・ガバナンスの改正」について書けることは,まだまだいくらでもあるんですが,疲れたので,民法の講義の予習に戻ります。
「2.親子会社関係の整備」「3.その他会社法施行後に浮かび上がった問題点の改正」は,また次回以降に書きます。

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平成26年度司法書士試験/総合情報ページ(記述の基準点予想など)
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松本 雅典




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中上級者もリアリスティック式で
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