現状の制約
今は,受験生の方や合格者の方が,ブログやTwitterなどで情報を発信するのが当たり前になりました。
その際,法律の内容に触れることが多々ありますが,「著作権」のせいで制約をされているのが現状です。
予備校のテキストで学習した方がほとんどですので,そのテキストの内容を書きたい,書かざるを得ないということが多々あります。
そこで,「引用」という形をとることになりますが,この要件が厳しいんです。
たとえば,以下の要件を充たす必要があります。
・出所の明示(著作権法48条)
書名や著作者名を明らかにする必要があります。
・明瞭区別性(最判昭55.3.28)
引用した文章を「 」でくくるなど,自分の文章との違いを明確にする必要があります。
・主従の関係(最判昭55.3.28)
これが,やっかいなんです。
出所を明示し,自分の文章との違いを明確にするだけではダメで,「自分の文章が主,引用が従」の関係になっている必要があります。
たとえば,自分の見解を記載するために必要に応じて他人の見解(反対意見など)を記載する,といった関係が当たります。
簡単にいうと,「手抜きの読書感想文(長々と引用して「私もそう思う」とつけるだけ)みたいなのはダメ」ということです。
ただ,自分の文章が何文字以上であれば主従の関係になっているとは,明確にいえません。
著作権法は,刑事罰(懲役刑など)もありますので,引用は,適法にすることに神経をすり減らされます。
受験界全体の財産
この窮屈な状況をどうにかできないかと考えていました。
おかげ様で,市販テキスト『リアリスティック』シリーズは,多くの方にお使いいただいています。
「司法書士試験のテキストの定番はリアリスティック」となれるよう,この後も執筆を続けていきます。
しかし,「司法書士試験のテキストの定番」になるのであれば,本気でそれを目指すのであれば,それは「受験界全体の財産」といえるテキストである必要があります。
著作権は私にありますが,それを私が現状の著作権法制どおりに独占していて「受験界全体の財産」といえるのか?
『リアリスティック民法』『リアリスティック不動産登記法』の引用を許諾します
そこで,後記1~6の要領で以下のテキストの引用を許諾します。
*出版社の方に私の意図を話したところ,出版社さんにも許諾していただけました。
『司法書士試験 リアリスティック民法Ⅰ[総則]』(松本雅典)
『司法書士試験 リアリスティック民法Ⅱ[物権]』(松本雅典)
『司法書士試験 リアリスティック民法Ⅲ[債権・親族・相続]』(松本雅典)
『司法書士試験 リアリスティック不動産登記法Ⅰ』(松本雅典)
『司法書士試験 リアリスティック不動産登記法Ⅱ』(松本雅典)
1.出所の明示はしてください
どのテキストの記載か知りたい方もいますので,出所の明示はしてください。
ただ,著作権法どおりにするのは面倒ですので,「著作者名がない」や「『リアリ不登法』など略称」でも構いません。
2.明瞭区別性を充たす必要はありません
ご自身の文章と明確に区別できなくても構いません。
3.主従の関係を充たす必要はありません
たとえば,「丸々2ページ載せて,『この講師はこういう説明方法をしているよ』と付けるだけ」でもOKです。
また,打ち込むのが面倒であれば,以下のようにテキストを写メで撮って載せていただいても結構です。
主従の関係を充たしにくく普通は違法になる確率が高いのですが,上記5つのテキストについてはOKです。
4.計10ページまで引用して構いません
10ページも要らないとは思いますが,多めに10ページにしておきました。
「10ページの引用を50記事に分けて,全ページを公開する」といった意図の場合は法的措置をとらざるを得ませんが,そういった明らかな違法行為をする方はいないと信じています。
5.表紙画像を掲載していただいても構いません
「本の表紙画像の著作権はない」と言う人もいますが,そんなことはなく,通常はデザイナーまたはデザイナーから著作権の譲渡を受けた出版社が著作権を有しています。
ですが,表紙画像を掲載していただいてOKです。
6.勉強会などで10ページまでならコピーを配付していただいて構いません
受験生の方や合格者の方で勉強会をすることもあると思います。
この際に書籍のコピーをすることは個人利用目的ではなく,勉強会は教育機関にも当たらないと考えられます。
ですが,10ページまでならコピーを配付していただいて構いません。
上記の許諾は,過去にも遡及します。
よって,すでにブログやTwitterなどに掲載しているものを削除する必要はありません。
『リアリスティック』シリーズが受験界全体の財産として活用され,受験生の方や合格者の方のブログやTwitterなどでの創作活動・交流が活発化することを願っています。
また,『リアリスティック』シリーズを講義で使用したい講師の方がいたら,私(sihousyosi_5month@yahoo.co.jp)までメールでご連絡ください。
これについては出版社さんに許諾を得ていないのですが,受験界全体の財産になることだと考えていますので,全力で説得します。
このような試みは,この業界ではなかったと思います。
よって,どうなるか全くわかりません。
想定していないご批判がくるかもしれません。
テキストの売上が下がるかもしれません。
ですが,これまで業界でされていなかった面白いことをしたいんです。
毎日みんながワクワクしているほうが,受験界も司法書士界も良くなります。
*これに続く著者が出てくることも期待していますが,著作権は非常に重要な権利であり他の方の著作権に私が口出しはできませんし,このやり方が正しいかはわかりません。
平成29年8月14日
松本 雅典