この記事は,平成28年9月に公開しましたが,以下のとおり追記・修正しています。

 

・平成28年10月5日,法務省の記載例の修正に伴い,一部記載例を修正しました。
・平成28年11月25日,「株主リストの内容の理由付け」および「組織再編の場合の株主リストの作成者」の項目を追記しました。
・平成29年2月25日,「株主リストが必要となる法人」および「株主リストが要求されるか問題となる登記」の項目を追記しました。

 

※追記・修正した箇所は,以下の本記事冒頭の記事内へのリンクから追記・修正した箇所がわかるようにしています。

 

今のところ,平成29年度の試験に最も大きく影響する改正が,商業登記(根拠条文は商業登記規則)の「株主リスト」です。
株主リストについての情報をまとめて記載します。
長くなってしまいましたが,この記事自体がレジュメのようなものだと思ってください。
つまみ食いで読みたい方のために,小見出しに飛べるリンクを貼っておきます。

 

改正日・施行日

 

条文

 

改正の趣旨

 

株主リストが要求される登記・株主リストの内容【平成28年11月25日,理由を追記】

 

株主リストの作成者

 

同一の申請書で株主総会の決議を要する複数の登記を申請する場合

 

申請書の記載方法【平成28年10月5日,法務省の記載例の修正に伴い,一部記載例を修正】

 

組織再編の場合の株主リストの作成者【平成28年11月25日,項目を追加】

 

株主リストが必要となる法人【平成29年2月25日,項目を追加】

 

株主リストが要求されるか問題となる登記【平成29年2月25日,項目を追加】
 

 

改正日・施行日

平成28年4月20日改正
平成28年10月1日施行

 

よって,平成29年度の試験範囲です。
以下の説明をお読みいただければわかりますが,商業登記(記述)での出題確率は高いです。

 

 

条文

まずは,新設された条文を確認しましょう。

 

 

商業登記規則61条(添付書面)
2 登記すべき事項につき次の各号に掲げる者全員の同意を要する場合には,申請書に,当該各号に定める事項を証する書面を添付しなければならない。
一 株主
株主全員の氏名又は名称及び住所並びに各株主が有する株式の数(種類株式発行会社にあつては,株式の種類及び種類ごとの数を含む。次項において同じ。)及び議決権の数
二 種類株主
当該種類株主全員の氏名又は名称及び住所並びに当該種類株主のそれぞれが有する当該種類の株式の数及び当該種類の株式に係る議決権の数
 
3 登記すべき事項につき株主総会又は種類株主総会の決議を要する場合には,申請書に,総株主(種類株主総会の決議を要する場合にあっては,その種類の株式の総株主)の議決権(当該決議(会社法第319条第1項(同法第325条において準用する場合を含む。)の規定により当該決議があつたものとみなされる場合を含む。)において行使することができるものに限る。以下この項において同じ。)の数に対するその有する議決権の数の割合が高いことにおいて上位となる株主であつて,次に掲げる人数のうちいずれか少ない人数の株主の氏名又は名称及び住所,当該株主のそれぞれが有する株式の数(種類株主総会の決議を要する場合にあっては,その種類の株式の数)及び議決権の数並びに当該株主のそれぞれが有する議決権に係る当該割合を証する書面を添付しなければならない。
一 10名
二 その有する議決権の数の割合を当該割合の多い順に順次加算し,その加算した割合が3分の2に達するまでの人数

 

 

商業登記規則61条2項と3項に入ります。
よって,旧規定の商業登記規則61条2項~7項が,それぞれ2項ずつ繰り下がります(「61条の2で新設してください」という意見もあったのですが……)

 

これ,よく出てくる項が多いんですよね……。

 

・商業登記規則61条2~4項(4~6項になります)
→就任承諾・選定を証する書面についての印鑑証明書の規定です。

 

・商業登記規則61条5項(7項になります)
→本人確認証明書の規定です。

 

・商業登記規則61条6項(8項になります)
→登記所に印鑑を届けている代表取締役などの辞任を証する書面についての印鑑証明書の規定です。

 

・商業登記規則61条7項(9項になります)
→資本金の額の計上に関する証明書の規定です。

 

5項と6項は,「昨年加わったばかりなのに,もうズレるのか!」ってハナシですよね。

 

 

改正の趣旨

株主総会議事録などを偽造して虚偽の役員の変更登記を行い役員になりすますなどの犯罪や違法行為が後を絶ちませんでした。
そこで,不実の株主総会議事録などが作成されて虚偽の登記がされることを防止するため,株主リストの添付が要求されることになりました。
平成27年の本人確認証明書とは真実性の確保を図る対象が異なりますが,厳格化するという意味では同じです。
なお,後述しますが,この株主リストの作成者は代表者であり,代表者が株主リストに登記所届出印で押印します。

 

ただ, 虚偽の登記がされていたということは,登記所届出印を勝手に押される,盗まれるなどという事態が生じていたと考えられます(商業登記の申請では,原則として代表者が申請書または委任状に登記所届出印で押印します)。
よって,株主リストも虚偽のものが作成される可能性が考えられます。
しかし,「株主リストを添付させておけば,事後的に株主名簿などと確認ができる」といった理由から,意義があると考えられています(法務省が考えています)。

 

 

株主リストが要求される登記・株主リストの内容

株主リストが要求される登記と,それに応じた株主リストの内容は,以下のとおりです。

 

1.登記すべき事項につき株主全員または種類株主全員の同意を要する場合(商業登記規則61条2項)

ex. 全部の株式の内容として取得条項付株式の定めを設ける場合(株主全員の同意を要する場合)や,種類株式の内容として取得条項付株式の定めを設ける場合(種類株主全員の同意を要する場合)が当たります。

 

これらに該当する場合,以下の株主リストを添付する必要があります。

 

・株主全員または種類株主全員について以下の事項を記載した株主リスト
①株主の氏名または名称
②住所
③株式の数(種類株式発行会社は,種類株式の種類および数)
④議決権の数

 

【平成28年11月25日追記】
株主全員または種類株主全員について上記の情報が要求されるのは,登記すべき事項につき株主全員または種類株主全員の同意を要する場合は,株主全員または種類株主全員がその事項についての結論を左右し得たからです。
下記2.と異なり,議決権の数の割合(下記2.⑤)の記載が要求されないのは,登記すべき事項につき株主全員または種類株主全員の同意を要する場合は,議決権の数の割合は関係ないからです。
【追記終わり】

 

2.登記すべき事項につき株主総会の決議または種類株主総会の決議を要する場合(商業登記規則61条3項)

株主総会の決議または種類株主総会の決議を要する場合ですから,非常に多くの登記が該当します。
これらに該当する場合,以下の株主リストを添付する必要があります。

 

・議決権の数上位10名の株主(※),または,議決権の割合が多い順に加算し議決権の割合が2/3に達するまでの株主または種類株主(※)について以下の事項を記載した株主リスト
①株主の氏名または名称
②住所
③株式の数(種類株式発行会社は,種類株式の種類および数)
④議決権の数
⑤議決権の数の割合

 

※株式会社の負担を考慮して,「上位10名」または「2/3」のうちいずれか少ない人数の株主リストで構わないとされました。上場企業も対象ですので,株主が何万人もいる場合もあります。その場合は,上位10名のリストを作成することになるでしょう。なお,この株主は,議決権を有しない株主(ex. 自己株式の株主)は除きますが,株主総会または種類株主総会に出席した株主に限られません。

 

【平成28年11月25日追記】
「上位10名」の要件は,公開会社においては,上位10名の株主の氏名などを事業報告に記載する必要があるため(会社法施行規119条3項,122条1号),それに合わせたものです。
「2/3」の要件は,株式会社において重大な事項については特別決議が必要とされていますので,特別決議の要件である「2/3」に合わせたものです。
【追記終わり】

 

 

株主リスト自体の記載例は,法務省の以下のウェブサイトで発表されています。

 

「株主リスト」が登記の添付書面となります

 

何通りも記載例がありますが,主要なものの直リンクを貼っておきます。
※いずれも,リンク先はPDFです。

 

1.登記すべき事項につき株主全員または種類株主全員の同意を要する場合(商業登記規則61条2項)

登記すべき事項につき株主全員または種類株主全員の同意を要する場合の株主リスト(PDF)

 

2.登記すべき事項につき株主総会の決議または種類株主総会の決議を要する場合(商業登記規則61条3項)

登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合において,議決権の数上位10名の株主の株主リスト(PDF)

 

登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合において,議決権の割合が多い順に加算し議決権の割合が2/3に達するまでの株主の株主リスト(PDF)

 

 

株主リストの作成者

株主リストは代表者が作成し,代表者が登記所届出印で押印します(平28.6.23民商99)。

 

 

同一の申請書で株主総会の決議を要する複数の登記を申請する場合

記述は,このパターンになることがよくありますね。
同一の申請書で,株主総会の決議を要する複数の登記を申請する場合,原則としては,登記ごとに株主リストを作成する必要があります(平28.6.23民商98)。

 

ただし,決議ごとに株主リストに記載すべき内容が一致するときは,その旨の注記がされた株主リストが1通添付されていれば足ります(平28.6.23民商98)。

 

通常は「ただし,」以下に該当します。

 

 

申請書の記載方法

申請書にどう記載するかは,先日,法務省の以下のウェブサイトで発表されました。

 

商業・法人登記申請
※「【H28.9.1更新】」と記載されているものが該当します。

 

 

1.登記すべき事項につき株主全員または種類株主全員の同意を要する場合(商業登記規則61条2項)

「添付書面 株主の氏名又は名称,住所及び議決権等を証する書面(株主リスト) ○通」
「添付書面 株主の氏名又は名称,住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト) ○通」【平成28年10月5日修正】
法務省が上記のとおり,記載例を変更しました(「議決権等」→「議決権数等」)。
下記2.の記載例と同じになりました。

 

2.登記すべき事項につき株主総会の決議または種類株主総会の決議を要する場合(商業登記規則61条3項)

「添付書面 株主の氏名又は名称,住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト) ○通」

 

「株主リスト」だけじゃダメだったのかな……。
記述の記載量が増えますね。

 

なお,上記1.と2の場合は,1文字異なります。
上記1.は「議決権等」となっているのに対して,上記2.は「議決権数等」となっています。
姫野先生のブログを読んでいて気づきました(最初に気づいたのは,LECさんの森山先生のようです)。
【平成28年10月5日削除】

 

 

組織再編の場合の株主リストの作成者

■平成28年11月25日にこの項目を追記しました。

 

組織再編の場合,存続会社等の株主リストの作成者は存続会社等の代表者で問題ありませんが,消滅会社等の株主リストを誰が作成するかが問題となっていました。
組織再編によっては消滅会社等の代表者が登記申請をしない場合もありますし,消滅会社等が消滅する組織再編もあるからです。

 

この点につき,日本司法書士会連合会が法務省民事局商事課に照会し,平成28年11月,以下の回答がありました(NSR-3〔日司連ネット〕にアップされています)。
少し細かい知識ですので,余裕があれば拾ってください。

 

【株主リストの作成者】

 

判断基準

判断基準は,「その会社の登記を申請する者が作成する」ということです。
テキストで,組織再編の消滅会社等の申請人を確認してください。
下記の株主リストの作成者と一致していることがわかります。

 

・株式会社が組織変更をする場合の組織変更をする株式会社の株主リスト
 →組織変更後の持分会社の代表者

 

・吸収合併の場合の吸収合併消滅株式会社の株主リスト
 →吸収合併存続会社の代表者

 

・新設合併の場合の新設合併消滅株式会社の株主リスト
 →新設合併設立会社の代表者

 

・吸収分割の場合の吸収分割株式会社の株主リスト
 →吸収分割株式会社の代表者

 

・新設分割の場合の新設分割株式会社の株主リスト
 →新設分割株式会社の代表者

 

・株式交換の場合の株式交換完全子会社の株主リスト
 →株式交換完全子会社の代表者

 

・株式移転の場合の株式移転完全子会社の株主リスト
 →株式移転完全子会社の代表者

 

【追記終わり】

 

 

株主リストが必要となる法人

■平成29年2月25日にこの項目を追記しました。

 

株主リストが必要となることがある法人は,以下のとおりです。

 

・株式会社
・特例有限会社
・投資法人
・特定目的会社

 

*持分会社や一般財団法人・一般財団法人では,株主リスト(社員リスト,評議員リストなど)は不要です(一般社団法人等登記規則3条参照)。

 

試験的には,「株式会社」「特例有限会社」は必要となることがあることと,「持分会社」「一般財団法人・一般財団法人」は不要であることを押さえてください。
“株主”リストですから,株主がいる法人に要求されるということです。
特例有限会社の持主(法人の持主)は,「株主」です。

 

【追記終わり】

 

 

株主リストが要求されるか問題となる登記

■平成29年2月25日にこの項目を追記しました。

 

*この項目では,商業登記規則61条3項の株主総会議事録の株主リストに絞って説明を記載しています。

 

株主リストが必要か問題となる登記があります。

 

「株主総会議事録を添付する場合は,株主リストを添付しておけばいい」という単純なものではありません。
「株主総会議事録を添付する場合は,株主リストを添付しておけばいい」は,明確な誤りですのでご注意ください。

 

株主リストは,「株主総会……の決議を要する場合」(商業登記規則61条3項)に要求されます。
「株主総会の決議は要しないが,株主総会議事録を添付する場合」も存在します。
以下の問題となる登記でご確認ください。

 

基本的な判断基準

株主リストを添付するかの基本的な判断基準は,株主総会の決議を要する場合に添付するです。

 

1.会計監査人のみなし再任

会計監査人は,選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会において別段の決議がされなかったときは,その定時株主総会において再任されたものとみなされます(いわゆる「みなし再任」。会社法338条2項)。
このみなし再任に基づいて会計監査人の重任登記を申請する場合,株主総会議事録(定時株主総会の議事録)を添付しますが,株主リストは不要です。

 

株主総会で会計監査人について決議をしているわけではないからです(上記の「基本的な判断基準」)
この株主総会議事録は,重任の年月日を証明するために添付しています。

 

この点は,法務省のWebサイト株主リストに関するよくあるご質問Q6)にも明記されています。

 

2.役員の任期満了による退任

役員が定時株主総会で再選されず,定時株主総会の終結時に任期満了で退任する場合,退任を証する書面として株主総会議事録(定時株主総会の議事録)を添付しますが,株主リストは不要だと解されています。

 

株主総会で役員の退任について決議をしているわけではないからです(上記の「基本的な判断基準」)

 

3.新株予約権の行使の登記における資本金として計上しない額(資本準備金として計上する額)を定めた株主総会

新株予約権の行使の際の資本金の額の計上において,新株予約権の発行時に資本金として計上しない額(資本準備金として計上する額)を定めている場合,その額は資本金として計上しません(資本準備金として計上します)。
そこで,新株予約権の行使の登記を申請する場合に,資本金として計上しない額(資本準備金として計上する額)があるときは,それを定めた株主総会議事録など(ex. 数年前の議事録)を添付します。

 

この株主総会議事録について,株主リストが必要かが問題となります。
私は,資本金として計上しない額(資本準備金として計上する額)を定めている(=株主総会の決議をしている)ため,株主リストは必要であると考えていました。

 

しかし,姫野先生のブログによると,東京法務局の管轄内では不要であるという扱いになっているようです。

 

ただし,東京法務局の管轄内の扱いのようですので,現時点で必要か不要かは断言できません。

 

4.清算結了の登記における決算報告の承認

株式会社の清算結了の登記において,決算報告の承認があったことを証する書面として株主総会議事録を添付します。
この株主総会議事録について,株主リストが不要であるという見解があるようです。

 

株主リスト(山本浩司の雑談室2)

 

「決議」と「承認」が異なるという理由のようです。

 

しかし,私は,講義で「株主リストは必要であると解されます」と説明しています。
「承認」も「決議」に含まれると考えられるからです。

 

法務省の記載例(株式会社清算結了登記申請書〔PDF〕)でも,株主リストの記載があります。

 

【追記終わり】

 

 

 

松本 雅典