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では報告形式の登記原因証明情報の記載を求められたらどうやって解答するの?

不動産登記法

先日の記事で,「司法書士試験の合格には要件事実は不要である」と記載しました。
姫野先生も要件事実不要論だそうです(以下の記事をご参照ください)。
懐かしい 

先日の記事では「要件事実は不要だ」ということとその理由を説明しただけで,「では報告形式の登記原因証明情報はどう書くのか?」という説明はしていませんでした。
この記事では,それを書いていきます。

大前提

登記ごとの報告形式の登記原因証明情報の記載方法を1つ1つ記憶することはしない
報告形式の登記原因証明情報の記載を求める出題に完璧に備えるのであれば,登記ごとの報告形式の登記原因証明情報の記載方法を1つ1つ記憶することになります。
しかし,そこまでする必要はありません。
 

今まで1度しか出題されていない問に備えるため,何十種類もの報告形式の登記原因証明情報の記載方法を記憶するのは,明らかに非効率的です。
また,そこまでしなくても,この記事で説明する方法でかなりの確率で対応ができます。

登記原因証明情報とは?

まず,登記原因証明情報とは何なのかを考えましょう。

登記原因証明情報は,その名のとおり「登記原因」を「証明」する「情報」です。
「登記原因」とは,「所有権移転」などの権利変動が生じた原因,つまり,権利変動が生じる要件のことです(名変は権利変動ではありませんので,一部例外はあります)。
簡単にいうと,「実体上,こういうこと(要件)があって,権利変動(効果)が起きましたよ~」ということです。

記載方法

よって,報告形式の登記原因証明情報の記載(※)を求められたら,「申請する登記の権利変動(効果)が生じる要件を満たしているか」を考え,その「要件」を記載していけばいいのです。
(注)「報告形式の登記原因証明情報の記載」とは,報告形式の登記原因証明情報のうち「登記の原因となる事実又は法律行為」の部分を指しています。登記の原因となる事実とは,たとえば,時効取得や相続のことです。法律行為とは,たとえば,売買契約や抵当権設定契約のことです。報告形式の登記原因証明情報には,「登記の原因となる事実又は法律行為」以外にも,当事者や不動産の表示も記載しますが,それは含んでいません。再度出題されたとしても,問われるのはおそらく「登記の原因となる事実又は法律行為」の部分だけなので(平成25年度もそうでした)。
平成25年度の問も,これをすればよいだけだったのです。

解答例(平成25年度の報告形式の登記原因証明情報の記載を求める問)

・平成25年6月7日,上記の不動産は,司法秋男に売り渡された。なお,当該売買契約には,「買主が売買代金の全額を支払い,売主がこれを受領した時に所有権が移転する」旨の定めがある。
・平成25年7月5日,司法秋男は,売買代金の全額を支払った

民法で学習するとおり,意思の合致だけで所有権は移転します(民法176条)。 
ただし,売買契約に「売買代金の全額を支払った時に所有権が移転する」などの特約を付けることができ,その場合には売買代金の全額が支払われた時に所有権が移転します。
平成25年度の売買契約には,この特約がありました(別紙5の第3条)。
よって,意思の合致(売買契約)だけでは所有権が移転しない(権利変動が生じる要件を充たさない)ので,特約がある旨と売買代金の全額が支払われた旨も,報告形式の登記原因証明情報に記載するのです。
これを文章にしているだけです。
他の報告形式の登記原因証明情報の例も挙げておきましょう。
【問題】
農地の売買がされた場合に,報告形式の登記原因証明情報に記載すべき事項はなんでしょうか。

【解答】
以下の事項です。
1.売買契約を締結した旨
2.対象不動産が農地である旨
3.農地法所定の許可書が到達した旨

実体の要件を考えてください。
不動産登記法で農地法(実体法)の学習をしますが,農地の売買の場合は,農地法所定の許可書がないと所有権が移転しません。
よって, 上記2.と3.が必要となるのです。

これを,平成25年度の解答例やテキストに掲載されている報告形式の登記原因証明情報の見本を参考に,それっぽく文章で書けばよいだけです。
報告形式の登記原因証明情報の文例集もありますが,それどおり書く必要はありません。
つまり,どんな民法の講義でも説明される「要件」を書いていけばいいだけなのです。
書くべき「要件」は,権利変動という「効果」が生じるための要件です。

ただでさえ学習量が膨大な司法書士試験において,「合格への最短ルートを提示してほしい」という受験生の方のニーズに応えるべき予備校が,その基幹講座(基礎講座・中上級講座)で要件事実まで採り入れていることは,甚だ疑問です。

 

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