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近年は,不動産登記法の択一(※)は難化してきています。
※今年はマシになりましたが,記述も難化傾向です。
そこで,「来年度に向けて不動産登記法をしっかりと学習しよう!」と思っている方が多いと思います。
それは大事なことなのですが,決して「暗記」に走らないでください。
特に3月までは。
もちろん,この時期から記憶はしないといけません。
過去問で問われていないところも含めて,正確に。
ただ,まだ時間のあるこの時期は,「不動産登記法の原則的な考え方を基にした記憶」「理解を伴った記憶」をしてください。
講師によっては,「民法と異なり暗記するしかない」と言う人もいます(もちろん,理由を言う講師のほうが多いです。多分)。
しかし,それはウソです。
民法と比べると学者本の数は圧倒的に少ないですが,ないわけではありませんし,実務書もあります。
たとえば,ここ数日で私がTwitterに投稿した,以下のツイートをご覧になってみてください(※)。
※Twitterのほうが,法律知識やその理由を多く書いています。ブログは1個のテーマをパソコンで長々と書くので,1つの法律知識やその理由を書く機会が減ってしまうのですが,Twitterは電車の待ち時間や歩いている時に書くので,1つの法律知識やその理由を書きやすいです。140字くらいがちょうどよいですし。
■保存行為として他の者の名義の登記ができるか
根本的なところから、不登法を考えてみましょう。
権利の部の登記義務はありません。権利の部の権利は私権ですから、対抗力を備えるかは、その人の勝手です。
だから、「他人の登記は代わりにできない」が大原則です。
これを大原則として、ここからズレるものを理由つきで記憶していきます。
これが,不動産登記法の権利の部の原則的な考え方です。
そこから外れる例外を理由つきで記憶していきます。
例外が、たとえば「所有権保存の登記」です。表題部所有者が共有であれば、その1人から所有権全部の保存登記ができます。
これは、所有権保存の登記は、その不動産の権利部がこの世に初登場する登記だからです。
この世に初登場するのに、所有権すべてを公示しないのはおかしいですよね。
他の例外は、たとえば「相続登記」。相続人が2人以上いる場合、1人から相続人全員の法定相続分の相続登記ができます。
これは、相続人の一部の者の持分のみの相続登記をすると、登記上、被相続人と相続人が共有の状態ができおかしいからです。死んだ瞬間に相続人に権利義務が移転していますので。
このように、原則と例外に分けたうえで、例外の理由づけをどれだけ多く仕入れられるかが勝負となります(記憶の効率を変えます)。
■登記の目的の「保存」と「設定」の違い
不登法の目的の「保存」と「設定」の違い。
・保存:設定行為(契約)によらないで発生する
・設定:設定行為(契約)によって発生する
所有権や先取特権は、設定行為(契約)によって新たに発生(移転とは違います)するわけではないですよね。
抵当権や地上権は設定行為によって発生します。
たとえば,私とみなさんで協力して(契約で),新しい所有権を生み出すことはできないですよね(「松本なんかと協力したくない!」というツッコミは置いておいてください。誰と協力するかが問題ではありません)。
所有権は,たとえば,建物であれば建てれば法律上当然に発生します。
なお,移転の効力は,協力して(契約で)生じることもありますが,それは新たに所有権を生み出しているわけではありません。
それに対して,抵当権や地上権は,(私が不動産などを所有していれば)私とみなさんが協力して(契約で)生み出すことができます。
登記法でも、このレベルで「なんでこのような記載になるのか?」の理由を丁寧に押さえていくのが大事です。
これはそんな大それたものではありませんが、このように本質(核)を知れば、記憶事項がグッと減ります。
たとえば、(登記しませんが)仮に登記するなら留置権は「保存」になるでしょう。
留置権は,協力して(契約で)生み出すわけではありませんから。
■登記事項
抵当権や地上権などは登記事項(利息,債務者,債権額,目的,地代など)をダラダラ書きますが,所有権には原則として登記事項がありません。
抵当権などと異なり、所有権は原則として登記事項がありません。原因(ないこともあり)と所有者のみ登記されます。
その理由は、所有権は制限物権ではなく、原則として何でもできる物権なので、「何ができる物権か」を登記に公示する必要がないのです。「所有権」とあるだけでわかるということです。
不動産登記法の原則的な考え方(上記「■保存行為として他の者の名義の登記ができるか」)を基に学習するのはもちろんですが,それだけでなく,単純に記憶しようとしてしまいがちな記載方法の違い(上記「■登記の目的の「保存」と「設定」の違い」「■登記事項」)まで考えた学習をしてください。
こういう学習をしていくと,その科目のことが本当にわかってきます。
言葉で伝えづらいのですが,その科目のことが本当にわかっていると,その科目を学習する意欲が上がり,記憶する意欲も上がり,問題を解いている時に「何の話だ?」と思う機会が減少します。
独学で学習する方は,このような説明がされているテキストを使用してください。
予備校を利用する方は,このような説明がされる講座を選んでください。
単に知識を羅列するのは講師の仕事ではなく,「理由付け」や「思い出し方」を提供するのが講師の仕事ですから。
なお,不動産登記法の学習方法については,以下の記事もご覧ください。
・不動産登記法が苦手になる理由(1)
・不動産登記法が苦手になる理由(2)
・不動産登記法こそパンデクテン方式で(1)
・不動産登記法こそパンデクテン方式で(2)
・不動産登記法こそパンデクテン方式で(3)