不動産登記法こそパンデクテン方式で(1)

不動産登記法
先日,不動産登記法が苦手になる理由(1)という記事で,以下のように申し上げました。
「不動産登記法は,最初に学習する総論がよくわからない。だから,『各論に必要な総論部分 → 各論 → 残りの総論』で学習するべきだ」
この点をもう少し掘り下げます。
結論から申し上げると,私は以下のように考えています。
不動産登記法こそパンデクテン方式で学習する
パンデクテン方式でどう学習するかを記載したいところですが,民法の講義でパンデクテン方式の説明をしていない講座も多いという現状があります。
これは,アウトです。
パンデクテン方式の説明をせずに,債権法を真に理解することはできません。
もちろん,私の講座ではご説明しています。
ただし,私の場合は,ご説明する箇所がかわっておりまして,民法の最初ではご説明しません。
債権総論に入る前に,債権編の目次を使用してご説明します。
ある程度民法の具体的な規定を学習した後で説明を受けたほうが,理解できるとの考えに基づきます。
ということで,「民法がパンデクテン方式で制定されている」という話からします。
パンデクテン方式とは,簡単にいうと「共通項を取り出して前に持ってくる」ということです。
民法の財産法は,以下のようになっています。
※私は,「家族法(親族・相続)は,財産法と別法律だと思って下さい」というスタンスで民法の講義を進めるため,家族法については記載しません。「別法律」というのは少し言い過ぎであり,批判もあるところですが,試験対策としてはこれがベストだと考えています。総則の多くの規定が家族法に適用されないことや,家族法(身分法)は財産法と同じ年に制定されたわけではないことなどは,私の考え方を支持するものとなるのではないでしょうか。
 

下からいきます。
「契約各論」に規定されているのは,売買,賃貸借など個別の契約のみに当てはまる規定です。
たとえば,賃貸借の規定でいうと,賃貸人に無断で賃借権の譲渡または転貸をした場合には,賃貸人は原賃貸借契約を解除することができます(民法612条2項)。

この場合,無断譲渡または無断転貸をやめることを催告せずに解除することができます(民法612条2項には「催告」の文言はありません)。
理由は,以下のとおりです。

(『Realistic Text 民法Ⅱ』P211より一部抜粋) 
上記のふき出しに書かれている理由により,無断譲渡または無断転貸の場合は,信頼関係が一発で「0」になります(それを表したのが,上の図です)。
この民法612条2項の無催告解除は,「契約総論」(基本的にすべての契約に共通する規定を置いた箇所)の民法541条(相当の期間を定めて催告したうえで解除できる)の特則です。
つまり,一般的には,契約を解除するには,催告をする必要があります。
しかし,無断譲渡または無断転貸の場合には,無催告解除ができるため,「契約各論」の民法612条2項に特則を置いているわけです。
逆にいえば,「契約各論」に特則がなければ,「契約総論」に戻ります。
上記の図にあります「賃料不払いによる解除」がその例です。
賃料不払いによる解除について,「契約各論」には特則がありませんので,「契約総論」の民法541条(相当の期間を定めて催告したうえで解除できる)に戻ることになります(賃貸借の場合,通常は1~2か月分の不払いでは解除できないということはありますが)。
もし,「契約総論」にもなければ,「法定債権関係」(事務管理,不当利得および不法行為)にも適用される「債権総論」に戻ります。
「弁済」(民法474条以下)がその例です。
契約にも事務管理,不当利得および不法行為にも,「債権総論」の弁済の規定は適用されます。
もし,「債権総論」にもなければ,「物権」にも適用される「総則」に戻ります。
たとえば,「意思表示」(民法93条~98条の2)です。
意思表示は,物権にも債権にも関係があります。
このように,上に行くに連れ,適用範囲が広くなるのです。
※もう一度,冒頭の図を示します。

これだけですと,まだわかりにくいと思いますので,次回の記事では「たとえ」を使ってパンデクテン方式をご説明します。
今のところ,伊藤塾さんの「山村先生」,辰已法律研究所さんの「小玉先生」「松本」をパンデクテン方式に当てはめてみようかと思っています。



松本 雅典


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