本人確認証明書―添付するかどうかの思考過程

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前回の記事で,本人確認証明書の基本部分を確認しました。
次は,本人確認証明書を添付するかどうかの思考過程を考えていきましょう。
※択一対策にもなりますが,記述を想定して書いています。

講師によって違いはあるでしょうが,私は本人確認証明書を添付するかの判断は,「答案用紙に解答を記載する時(15:30~16:00)」で構わないと考えています。

登記すべき事項から考える

添付書面ですので,ご自身が書いた「登記すべき事項」を見て考えていきます。
『リアリスティック商業登記法 記述式』P148をご確認ください。

 (『リアリスティック商業登記法 記述式』P148より一部抜粋)
登録免許税は,登記の事由をもう一段階抽象化したものですので,登記の事由をみて考えます。
添付書面は,具体的に登記すべき事項ごとに考える必要がありますので,登記すべき事項から考えます(※)。
※ただ,私の解法では,答案用紙の記載に入る時点で,ほとんどの添付書面が書けているんですがね…。『リアリスティック商業登記法 記述式』の解法は,必ず身につけてくださいね。

取締役,監査役,執行役がいないかを探す

登記すべき事項の何を見るかですが,前回の記事に記載しましたとおり,本人確認証明書が要求される可能性があるのは,以下の役員等でした(商登規61条5項本文)。
・取締役
・監査役
・執行役
よって,ご自身が書いた登記すべき事項を見て,「取締役,監査役,執行役がいないかを探す」ことになります。
指名委員会等設置会社が出る確率は低いので,おそらく探すのは取締役と監査役になります(平成27年度もそうでした)。
 

例外に当たらないかを検討する

取締役,監査役,執行役でも,前回の記事に記載しましたとおり,以下の場合は添付が不要となります。
 
1.商業登記規則61条2~4項のいずれかにより,取締役・監査役・執行役が就任承諾書または選定を証する書面に押印した印鑑につき市区町村長の作成した印鑑証明書を添付した場合,その取締役・監査役・執行役についての本人確認証明書は不要となります(改正商登規61条5項ただし書)
 
2.就任登記が再任の登記である場合,再任する取締役・監査役・執行役については本人確認証明書は不要となります(改正商登規61条5項本文かっこ書)
このうちどちらから検討するかですが,私は以下の検討順をお勧めしています。
・再任に当たるか(上記2.)
  ↓
・印鑑証明書を添付しているか(上記1.) 

取締役,監査役,執行役1人1人について,上記の順で例外に当たるかを判断していきます。
1人1人,例外に当たるかを考えないといけませんので,ご注意ください。
この順にしているのは,(再任に当たるかについて少し細かいハナシもあるのですが)一般的には印鑑証明書の判断よりは再任に当たるかの判断のほうが容易だからです。
また,印鑑証明書については,平成26年度に,誰のものを何通添付するか判断が不可能な出題ミスがありました。

まとめ

本人確認証明書を添付するかどうかの思考過程をまとめると,以下のとおりです。

本人確認証明書を添付するかどうかの思考過程

1.登記すべき事項を見て,「取締役,監査役,執行役がいないかを探す」
  ↓
2.取締役,監査役,執行役の1人1人について再任に当たるかを考える
  ↓
3.取締役,監査役,執行役の1人1人について印鑑証明書を添付しているかを考える

なお,「株主総会議事録の記載を援用する場合に,株主総会議事録に取締役,監査役の住所が記載されているか」という問題もあるのですが,それは本人確認証明書の影響で就任承諾書について株主総会議事録の記載を援用できなくなる場合の記事に書いています。
 

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