先日,森山先生から,『司法書士合格六法』をご献本いただきました。
2週間ほど仕事で使わせていただいたので,書評の記事を書きます。
森山先生とは交流させていただいていますが,偏った見方ではなく,できる限り客観的に書くつもりです。
結論
まず,結論を申し上げます。
受験生の方に「お薦めの六法は?」と聞かれた場合,これまでは以下のいずれかの六法をお薦めしていました。
大型六法は使いにくいと思いますので,小型六法で基本的に司法書士試験でしか出題されない法令(不動産登記令,不動産登記規則,商業登記規則など)もひととおり掲載されているのが,以下の2つくらいだからです(『登記六法』は小型というより中型かもしれませんが)。
司法書士試験の出題法令の網羅率が高いのは,『登記六法』です(ほとんどすべて載っています)。
しかし,これからは『司法書士合格六法』もお薦めに加えようと思います。
以下,その理由を「特徴」という形で記載します。
特徴によっては人によって合う・合わないがあると思いますので,参考にしてください。
特徴
司法書士試験に必要な法令のみ収録
たとえば,一般的な六法では掲載のないことがある,以下の法令まで載っています。
・不動産登記令
・不動産登記規則
・会社計算規則
・商業登記規則
・仮登記担保契約に関する法律
・登録免許税法
・工場抵当法
なお,受験生の方には不要だと思いますが,さらに完璧な網羅性を目指すのであれば,以下の法令などの掲載の検討の余地があると思います。
・行政不服審査法
不動産登記法などの審査請求の箇所で見ることがあります。
・不動産登記事務取扱手続準則(通達)
・商業登記規則別表
・商業登記等事務取扱手続準則(通達)
・一般社団法人等登記規則
・登録免許税法施行規則
改正法
民法は,現行法と新民法が別々に載っています。
新民法のほうには,改正された条文については,四角囲いで旧規定も掲載されています。
商法などは,新商法ペースで掲載され,四角囲いで旧規定が掲載されています。
債権法改正の影響で,商法なども変わりますので。
商法は,今年の改正で口語化された点は,口語化のほうの条文が掲載されています。
フォント
フォントのサイズは,六法の中では大きいです。
たとえば,『登記六法』よりも大きいです。
メインの法令のサイズは,8ptか9ptだと思います。
条文番号と見出し(かっこ書の見出しのこと)が青字になっています。
この部分は,白黒の六法でもゴシック体にしているので,条文の見つけやすさはそこまで変わらないと思います。
好みの問題ですね。
判例・先例なし
私は,受験生時代も今も,六法で判例・先例を確認することはないので,記載しないでもらったほうが次の条文にたどり着きやすく使いやすいです。
判例・先例なしの六法は,法令の網羅性が低いので使えなかったのですが,網羅性がありながら判例・先例なしは私には理想的です。
ただ,六法で判例・先例を確認する方には,当然マイナス要素になります。
条文のかっこ書を飛ばしやすい
三省堂さんが初めて始めたのだと思いますが,条文のかっこ書のフォントを小さくし,かつ,グレーの網掛け(マーカーのようなもの)を施しています。
会社法のように,「かっこ書を作った人を1回ひっぱ……」と考えてしまうような法令では,特に助かります。
これは,画期的だと思います。
参照条文なし
関係条文はなくてもいいのですが,参照条文はあったほうがいいと思います。
不動産登記法21条を例に説明します。
登記官は,その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において,当該登記を完了したときは,法務省令で定めるところにより,速やかに,当該申請人に対し,当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。ただし,当該申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合その他の法務省令で定める場合は,この限りでない。
『登記六法』などだと,この条文に以下のような記載があります。
【法務省令で定めるところ・登記識別情報の通知】
規六二~六三の二,準三七
【法務省令で定める場合・通知不要】
規六四,準三八
来年度の改訂の際は,できれば記載していただきたいです。
僭越ながら少し改善点はあると思いますが,私はこの六法をメインで使うことにしました。
(追記)森山先生からコメントを頂きました。
松本 雅典