本人確認証明書のハナシの続編です。

 

以下の2つの記事をお読みでない方は,先にお読みください。

 

 

本人確認証明書―基本部分
*本人確認証明書の基本部分に自信のない方は,この記事だけでもお読みください。

 

本人確認証明書―添付するかどうかの思考過程

 

 

  • 平成27年度向け以前のマツモトの基礎講座をご受講された方へ

平成27年度向けの講義ではお伝えしていない内容ですが,平成28年度以降は出題される可能性がありますので,この記事の内容まで押さえておいてください。

 

 

問題

 

事例

株主総会議事録
議決権のある株主全員出席

 

第○号 役員選任の件
議長は,本株主総会の終結により任期満了する取締役の後任を選任する必要がある旨を述べ,その選任方法を議場に諮ったところ,議場より次の者を推す旨の動議があり,これを改めて議場に諮り,その承認を求めたところ,満場一致をもってこれを承認可決した。なお,被選任者は席上就任を承諾した。

 

取締役 A

 

※Aは,再任ではなく,今回の登記申請においてAの印鑑証明書は添付しない。

 

(注)登記の申請書に添付すべき書面について,他の書面を援用することができることが明らかなときは,これを援用しなければならない。

 

Aの就任登記をするとき,Aの就任承諾を証する書面を「取締役の就任承諾書は株主総会議事録の記載を援用する」とすることができるか?

 

 

 

 

答え:できません

 

 

理由

上記のような株主総会議事録は,本人確認証明書が添付書面として加わる以前は本試験で何度も示され,「取締役の就任承諾書は株主総会議事録の記載を援用する」でOKでした。

 

しかし,本人確認証明書について,以下の通達(平成27年2月20日民商18の第2.1(1)ウ)があります。

 

 

取締役等の本人確認証明書の添付を要する登記の申講をする場合において、株主総会の席上で選任された取締役等が就任を承諾した旨が記載されるとともに、当該取締役等の氏名及び住所が記載されている株主総会議事録が添付されているときは、これを当該取締役等の就任承諾書に代わるものとして取り扱うことができるが、当該議事録に就任を承諾した取締役等の住所の記載がない場合には、別途、当該取締役等の就任承諾書(当該取締役等がその住所を記載し、記名押印したもの)が添付されない限り、当該申請を受理することができない。

 

 

つまり,「本人確認証明書を添付する者について,就任承諾を証する書面として株主総会議事録の記載を援用するなら,株主総会議事録に取締役の住所を書いておけよ!書いていないなら,援用はできないから,別に住所の記載がある就任承諾書を添付しろよ!」ということです。
上記の事例は,株主総会議事録にAの住所が記載されていませんので,別に住所の記載があるAの就任承諾書を添付する必要があります。

 

この扱いの理由は,本人確認証明書の制度が,設立登記または就任登記をする取締役,監査役,執行役の氏名・住所が,本人確認証明書(住民票の写しなど)の氏名・住所と一致しているかを確認することで,本人確認をするものだからです。
「本人確認証明書(住民票の写しなど)の氏名・住所と一致しているかを確認するのに,就任承諾を証する書面に住所が書いていなければ(氏名が書いていないことは考え難いです),確認できないだろ!」ということです。

 

実は,条文にも書かれています。

 

 

商業登記規則61条(添付書面)
5 設立の登記又は取締役,監査役若しくは執行役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書には,設立時取締役,設立時監査役,設立時執行役,取締役,監査役又は執行役(以下この項において「取締役等」という。)が就任を承諾したことを証する書面に記載した氏名及び住所同一の氏名及び住所が記載されている市区町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該取締役等が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)を添付しなければならない。ただし,登記の申請書に第二項(第三項において読み替えて適用される場合を含む。)又は前項の規定により当該取締役等の印鑑につき市区町村長の作成した証明書を添付する場合は,この限りでない。

 

 

本人確認証明書が初めて出題された平成27年度の商業登記(記述)では,この点の出題は避けられましたが,平成28年度以降は出題される可能性があります。
議事録に住所が記載されているかご注意ください。

 

 

 

松本 雅典