報告形式の登記原因証明情報の記載を求める問題(平成25年度)

平成25年度の不動産登記(記述)で初めて,報告形式の登記原因証明情報(売買を原因とする所有権移転の登記)の記載を求める問題が出ました。
解答例は,以下のとおりです。

解答例

・平成25年6月7日,上記の不動産は,司法秋男に売り渡された。なお,当該売買契約には,「買主が売買代金の全額を支払い,売主がこれを受領した時に所有権が移転する」旨の定めがある。
・平成25年7月5日,司法秋男は,売買代金の全額を支払った。 

今後も,報告形式の登記原因証明情報の記載を求める問題が出る可能性があります。
登記原因証明情報は,現在の不動産登記では大きな役割を担う重要な添付情報であり,司法書士が日々作成している添付情報でもあるからです。 

要件事実は必要か?

平成25年度の本試験後には,「あの問に答えるには,要件事実の学習をしておく必要があった」と言われました。
しかし,私は,以下のように考えています。

私の考え

私は,司法書士試験の合格には,要件事実の学習は不要だと考えており,それは報告形式の登記原因証明情報の記載においても同様です。
ただし,民事訴訟法(択一)で問われる限度においては要件事実は必要だと考えており,民事訴訟法の講義では要件事実の超基本部分は説明しています。
ですが, 民法や不動産登記法で,要件事実も説明しながら,または,要件事実を前提に講義する必要はないと考えています。

私は,「要件事実不要論者」になるのでしょう。

その理由を説明しますが,その前に「要件事実って何?」という受験生の方が大半だと思いますので,要件事実についてご説明します。

要件事実とは?

「要件事実」とは,民事訴訟法で出てくる「主要事実」のことだと考えてください。

正確には,「要件事実=主要事実」と考える説と,「要件事実=主要事実」とは考えない説があるのですが,そこまでは細かいでしょう。
要件事実というと,普通は「民事訴訟における,原告と被告の主張・立証責任の分配」をイメージします。
認定考査でも,この分配を記憶していきます。
日本の民事訴訟では,類型ごとに「原告はこれを主張・立証しなさい(請求原因,再抗弁)」「被告はこれを主張・立証しなさい(抗弁,再々抗弁)」という役割が決まっています。

と説明しましたが,この説明にも反論がきそうです。
要件事実については,最近でも「司法研修所の見解はどうなの?」など色々と考え方があるので,上記は,あくまで一般的な要件事実の学習のイメージを書いたと思ってください。

 

要件事実が司法書士試験に不要な理由

まず,「択一」と「記述の申請書作成」では問われないですよね。
「問われないけど,要件事実の学習をしておいたほうが判断しやすくなる」(なりますかね?)と反論される場合は,私にはそれがよくわからないので,択一や記述で判断しやすくなる理由のご説明をお願いします。
ということで,最も問題となるのは,平成25年度の報告形式の登記原因証明情報の記載を求める問でしょう。
たしかに,登記原因証明情報の内容は,要件事実と関係があります。
日本の不動産登記制度はドイツの強い影響を受けていますが,ドイツがかつて登記制度において「仮装訴訟」の形を採っていたことも理由の1つとなるでしょう。
仮装訴訟とは,(売買を原因とする所有権移転の登記なら)買主が売主を訴え,勝訴判決を得ることで,登記の真正を確保する制度です。
日本の不動産登記の共同申請主義(不動産登記法60条)も,実はここからきています。
しかし,要件事実と登記原因証明情報の記載は,一致しません(一致するものもあります)。
たとえば,『不動産登記法案内』(七戸克彦)
P146にも「民事訴訟における請求原因事実(要件事実〔松本注〕)のような厳密な内容でなくてもよい」とあります。
要件事実と登記原因証明情報の記載が一致しているわけではないので,認定考査の試験勉強で使う『要件事実の考え方と実務』(加藤新太郎,細野敦)の内容をすべて記憶しても,報告形式の登記原因証明情報が書けるようになるわけではないのです。
ただ,少し書きやすくはなります。
それは認めています。

6,044人(27.9%)の司法書士の存在

司法書士21,661人のうち6,044人(27.9%)は認定を受けていません(平成27年1月1日のデータ)。
認定を受けていないので,要件事実を理解しているという能力担保はされていない方たちです。
司法書士によっては,要件事実の「よ」の字も知らない人もいます。
しかし,その6,044人の司法書士も,毎日,報告形式の登記原因証明情報の作成をしています。
「要件事実がわかっていなければ,報告形式の登記原因証明情報が作成できない」とすると,この6,044人の司法書士の日々の仕事を否定することになりかねません。
私が勤めていた事務所の先生も,認定を受けていませんでした。
ですが,日々,報告形式の登記原因証明情報の作成をし,神奈川を中心として不動産登記制度を支え,国民の権利を守っておられました。
私は,今でも尊敬しています。
要件事実をマストとすることは,認定を受けなくても登記申請の代理業務ができる現在の司法書士制度自体がおかしいという主張になり,6,044人の司法書士の日々の仕事を否定しかねないのです。

それも1つの主張ですので構いませんが,私はそのような主張はできませんし,そのような考えもありません。
 

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