「そろそろ出るかな」という一押しの判例。
テキストに掲載されていない場合は,加えてください。
※『Realistic Text 民法Ⅰ』だと,P171に掲載されています。
民法177条の登記請求権に関する判例で,「真正な登記名義の回復を原因として中間省略登記ができるか」というハナシです。
民法で出ても不動産登記法で出てもおかしくありません。

最高裁判所判決平成22年12月16日

不動産の所有権が,元の所有者から中間者に,次いで中間者から現在の所有者に,順次移転したにもかかわらず,登記名義がなお元の所有者の下に残っている場合において,現在の所有者が元の所有者に対し,元の所有者から現在の所有者に対する真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を請求することは,物権変動の過程を忠実に登記記録に反映させようとする不動産登記法の原則に照らし,許されないものというべきである。 

実際の事案は,贈与がされた後,相続(遺産分割)で移転したとか,持分10分の3とか色々とあるのですが,簡略化すると以下のとおりです。
※判決文を読みたい方は,こちら(PDF)からお読みください。

簡略化

Y→A→Xと順次に所有権が移転した場合において,XがYに対し,XからYに対する真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を請求することは許されない。 

物権変動(私は最近は「権利変動」といいますが)の過程を忠実に登記記録に反映させるのが,不動産登記法の原則だからです。
なぜそろそろ出るかなと思っているかというと,近年の不動産登記法の学者本や登記研究などに掲載される論文には,この判例が必ずといっていいほど出てくるからです。
たとえば,七戸先生は以下の書籍で,はしがきでこの判例を挙げていますし,最終節の第8章第3節(P328)でも挙げています。



※受験生の方が読む本ではありませんが,合格者の方が「不動産登記法の体系をきちんと理解したい」ということでお読みになるのであれば,お薦めします。「不動産登記法の条文順に従って説明した」というスゴイ本です。予備校本は,だいたい不動産登記法の条文の体系は崩して説明します。また,受験勉強で得られない知識も得られます。ちなみに,この本には,「司法書士は,弁護士・公証人とともに,近代日本最古の歴史を誇る名門の法律専門職です。」という嬉しい記述もあります(P63)。

不動産の転売がバンバン行われていたバブル時には,中間省略登記もバンバン行われていたそうです。
しかし,平成16年の不動産登記法改正で登記原因証明情報の提供が原則として必須となるなど,中間省略登記はしにくくなりました。
そこにきて,上記の平成22年の判例が出ました。
この判例は,中間省略登記,ひいては不動産登記の考え方に大きな影響を与えるものだと考えられています。
不動産登記法の書籍や論文で,試験委員の先生方も何回も見ている判例ですので,さすがにそろそろ出すはず。

松本 雅典

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